セミナーレポート
画像処理を前提にした写真撮影で,小さいが故の限界を突破。コンパクトデジタルカメラを侵食し,進化するスマホカメラ(株)モルフォ 高尾慶二
本記事は、画像センシング展2013にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
小走りに走りながらの動画撮影で,ブレを抑える機能も登場
最近のスマートフォンはバッテリー容量が大きくなり,フルHDの動画が撮影できるようになりました。そこで,歩きながら動画を撮りたいというニーズに応えるため,動画の手持ち撮影時に発生する手ブレを軽減する「Movie Solid」を開発。高度なブレ補正機能によって,小走りで走りながら撮影しても,ブレずに動画を撮ることができます。また,最近の女子会では,料理の写真や参加メンバーの集合写真をよく撮ります。しかし,目を閉じていたり,笑顔が気に入らない人が参加者に1人でもいると,SNSに写真をアップできません。そこで,全員が気に入った写真をアップしたいといニーズから生まれたのが「Morpho Group Photo」という集合写真編集技術です(図1)。 これは複数の人が写った写真を連写し,その中からそれぞれ一番よい顔を自動的に選び,ベストショットに合成するものです。搭載されたスマートフォンのユーザーからは重宝しているという声が寄せられています。さらに,パソコンでは数年前からある技術ですが,静止画の中で,電車など動いているものだけを動かすシネマグラフを作成する「Morpho Cinemagraph」も開発,提供しています。一眼レフカメラにはレンズの明るさを示すF値が1.0とか1.8のように小さいレンズがあります。こうしたレンズは被写界深度が浅いため,人物などを撮る場合,背景をぼかすことができます。それに対して,今までのスマートフォンはF値が2.4以上と大きく,被写界深度が深いため,そうした写真を撮ることができませんでした。そこで開発した「Morpho Defocus」は被写体にフォーカスした写真と背景にフォーカスした写真を別々に撮影,合成して背景のぼかし度を強調した写真にすることができます。ぼかし度はマニュアルで調整可能で,近接撮影や人物撮影に効果的に使うことができます。また,観光地に行くと,人がたくさんいて,思い通りの写真が撮れないことがあります。そこで,同じシーンの写真を連続撮影し,人など動いている部分を認識,撮影後に除去する「Morpho Object Eraser」も開発しました。
<次ページへ続く>
(株)モルフォ 高尾 慶二
1984年、豊橋技術科学大学修士課程修了後、自動車メーカーのマツダに入社。92年、マツダが資本提携していた東京デジタルホン(J-フォンの前身。現・ソフトバンクモバイル)へ出向。携帯電話の開発に取り組み、2000年に「写メール」を開発。その後、2004年に退社後コンサルティング会社等を経て、08年1月、(株)モルフォに入社。