セミナーレポート
多数の薄い断層面から異なる断面や身体の3次元画像を作成。画像診断におけるセンシングと画像処理技術国際医療福祉大学 縄野 繁
本記事は、画像センシング展2013にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
フィルムを使わないデジタル撮影が主流になる画像診断機器
画像診断は,人間の体内を非破壊的に見て,異常の有無を判断する学問で,そこで使われる,CT(computed tomography)やMRI(magnetic resonance imaging),超音波(ultrasonography),ラジオアイソトープ(核医学検査)などは近年,飛躍的に発達しました。画像診断では診断機器(モダリティ)ごとに,センサーが異なるので,データ収集部分がセンシングに相当します。モダリティには,胸部や骨などの単純X線写真,胃や腸など消化管X線写真,脳血管や動脈,腹部血管などの血管造影,CT,MRI, 超音波, ラジオアイソトープPET(positronemission tomography)を含む核医学検査があります。最近の画像診断は,フィルムを使用しないデジタル撮影機器が主流になり,読影もフィルムからモニターヘと変わりました。画像診断の主力はCTですが,ノイズ低減ソフトウェアによって被曝量が低減すると共に,サーバー容量の増大により,1~2mm画像もそのまま保管できるようになりました。デジタル画像の有利な点はフィルム保管庫が不必要で,フィルムの紛失や画像の劣化が無いことなどです(図1)。 不利な点は銀粒子よりピクセルが大きく,フィルムに比べて,ボケて見えやすいこと,画素数が大きくなると,転送に時間がかかることなどです(図2)。しかし,パソコンやモニター,サーバーの価格は毎年下がり,通信速度は上がっているので,フィルムに戻りたいと考える医師はいないでしょう。 X線撮影の検出器(X線を受ける部分)には,イメージングプレートを使うCR(computed radiography)方式とフラットパネルを使うDR(digital radiography)方式があります。消化管撮影装置や血管造影装置の検出器はDR方式が主流です。X線デジタル画像処理は一般写真のような反射光ではなく,透過写真のため,撮ってみないとどのような像になるか分かりません。CRやDRは,フィルムに比べて非常に露光域が広いので,画像化する濃度域を切り出す必要があります。そこで,画像全体の信号のヒストグラムを利用して,組織を推定し,画像化する濃度領域を決定します。
デジタルX線では,照射線量が低くても画像は作成できますが,デジタルカメラと同じで,ノイズが多くなります。ノイズが多い画像は,辺縁がシャープに描き出されません。また,ノイズ低減のために,平滑化処理を行うと,ボケた画像になってしまいます。さらにマンモグラフィー(乳房X線検査)のように微小石灰化を検出しなければならない場合には,白い小さなノイズは石灰化との鑑別が困難で,診断に使えない画像になってしまいます。
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国際医療福祉大学 縄野 繁
1981年千葉大学医学部卒業。同年千葉大学医学部放射線科入局。1986年国立がんセンター放射線診断部・医員。1992年国立がんセンター東病院・放射線部医長。2002年同部長。2007年より国際医療福祉大学三田病院 放射線診断センター・教授。専門はCT、MRIの診断。消化管X線診断。マンモグラフィ診断。CAD(コンピュータ支援診断)の研究。