セミナーレポート
多数の薄い断層面から異なる断面や身体の3次元画像を作成。画像診断におけるセンシングと画像処理技術国際医療福祉大学 縄野 繁
本記事は、画像センシング展2013にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
取り組みが進む診断や治療を高度に支援する応用技術の開発
ここまで医用画像処理のデジタル化の動きを見てきましたが,医師はコントラスト(白いか黒いか),左右差,大きさや形態の異なり,線の集中や細い構造線の乱れなどのパターン探索,過去画像との比較,などから異常を見つけます。そのような医師の診断を補助し,見落とし・拾いすぎの減少による診断精度の向上させ,診断時間の短縮,鑑別診断の向上,病巣の自動計測の実現を目指しているのが, コンピューター支援診断(CAD:computer-aided detection またはcomputer-aided diagnosis) です。CADは肺や乳腺などで製品化されており,その他の多数の疾患や臓器で研究が行われています。例えば,マンモグラフィー用CADを使えば,大量のマンモグラフィーを短時間で読影しなければならない場合の見落としを減らすことができます。現在,日本の医用工学に携わる研究者の多くが参加している文科省の科学研究費補助金新学術領域研究の大規模プロジェクト「医用画像に基づく計算解剖学の創成と診断・治療支援の高度化」が最終年を迎えています。この研究プロジェクトでは,個体差が極めて大きい解剖構造を統計数理的に記述できる計算解剖モデルの表現方法や膨大な個体数の画像データからモデルを構築する方法を開発しています。そして,そのモデルに基づき,人体を解剖したときに得られる情報と等価な人体構造情報を医用画像から頑健かつ精密に得られるようにすること,その技術に基づき,診断や治療を高度に支援できる応用技術の開発に取り組んでいます。医用画像のセンサーは各モダリティで今後も発展し,診断のための画像処理や支援診断技術もさらに進化していくことでしょう。
国際医療福祉大学 縄野 繁
1981年千葉大学医学部卒業。同年千葉大学医学部放射線科入局。1986年国立がんセンター放射線診断部・医員。1992年国立がんセンター東病院・放射線部医長。2002年同部長。2007年より国際医療福祉大学三田病院 放射線診断センター・教授。専門はCT、MRIの診断。消化管X線診断。マンモグラフィ診断。CAD(コンピュータ支援診断)の研究。