セミナーレポート
医用画像処理を始める前に知っておきたいこと ~画像化の原理から実際の検査方法まで~広島大学 檜垣 徹
本記事は、画像センシング展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
CTの画像再構成法と造影検査
投影データから断層を得るための処理が画像再構成です。現在,様々な画像再構成法があります。主流になっているのは,Filtered Back Projection(FBP)です。最近では被ばく低減を目的としたHybrid Iterative Reconstruction(Hybrid IR)も良く用いられています。FBPは数十FPS(画像/秒)という高速な再構成が可能で,逆投影法によって断面画像を得ることができます。ただし,逆投影法だけでは画像がボケるという問題がありますので,フィルタ関数によりボケを修正します。メーカーによりフィルタ関数の呼称はさまざまですが目的は類似しています。空間分解能を重視した関数は,肺野など微細構造を観察する際に利用され,コントラスト分解能を重視した関数は,腹部臓器などの微妙なコントラスト差を観察する際に利用されます。
Hybrid IRは,FBPをベースにノイズ低減処理が行われます。S/Nが良くなることで,X線が減らせ,結果的に被ばくが減らせます。ただし,画像のボケなどの問題点があります。
CTでは,X線吸収係数の高いヨード造影剤を注射して撮影することで組織間にコントラストをつける造影検査が行われています。造影検査をすることで,構造がわかりやすくなり,血流の状態がわかります。造影剤注入後に複数のタイミングで撮影するダイナミック造影検査も良く行われています。私たちは現在,全身の循環をシミュレートすることで造影剤の分布を推測し,造影剤の注入法や撮影タイミングの最適化を図る造影シミュレーターの研究を行っています。
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広島大学 檜垣 徹
2011年広島大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学) 2008年より1年間,Harvard Medical School/Brigham and Women’s Hospitalにて研究員。2009年より日本学術振興会特別研究員(DC2)。 2011年より広島大学大学院医歯薬保健学研究院特任助教,現在に至る。 放射線診断学研究室にて,医工連携の推進,臨床に即した医用画像処理の研究に従事。