セミナーレポート
“考えるクルマ”と交通社会の未来日産自動車(株) 二見 徹
本記事は、画像センシング展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
交通社会の今後の発展の鍵は「電動化」と「知能化」
我々が生活している世界では,移動が基本的な機能となっており,クルマは経済活動の中心的な役割を果たしてきてきました。GDPが増加していくと移動距離がそれに比例して増えるという関係は過去も今もずっと変わっていません。しかし,最近,先進国ではGDPも移動距離も鈍化しています。日本では2002年くらいからまったくアクティビティがなくなっています。これは都市化の影響や高齢化,若者のクルマ離れといったことが影響しています。こういった状況を打開していくためには,飛躍的なジャンプが必要です。その鍵を握るのが「電動化」と「知能化」の技術です。クルマの「電動化」ということでは,電気自動車に象徴されますが,ハイブリッドもいわば電動化の一つの形です。我々がクルマに乗るときに一番気になるのはガソリンの価格ですが,電気自動車は非常に経済的に優れています。ガソリン車は1キロを走行するに約10円かかります。ハイブリッド車では6円です。これが電気自動車になると2円と,実にガソリン車の5分の1になります。圧倒的なランニングコストの安さは非常に大きな魅力です。電気自動車を購入している人に,「何を重視して買いましたか?」と聞くと,売出しの当初と最近では大分変ってきています。2010年当初は,物珍しさやゼロエミッションということで,エコに対して敏感な人たちが買っていました。しかし,3年目の2013年では,電気自動車を買う一番の理由に「ランニングコストの安さ」が挙がっています。一度クルマを購入すれば,その後ほとんど維持費がかからない。それが最大の魅力であると指摘しており,こういった背景を捉え,かなりの勢いで電気自動車が伸び始めています。
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日産自動車(株) 二見 徹
1981年 東京大学 工学部電子工学科卒業 1981年 日産自動車株式会社入社 中央研究所にて車載電子システム研究を担当 1987?1990年 電子設計部にて車載電子システム開発を担当 1991年 ITシステムの企画・開発を担当 2005年 IT&ITS開発部にて企画・開発を担当 現在 IT&ITSシステム及びEV-ITシステムの企画,開発を担当 受賞暦:1999年 SAE(米自動車技術学会)最優秀論文賞受賞