セミナーレポート
生活支援ロボットの開発 ~障がい者,高齢者,およびその家族や介護者のQOL向上のために~トヨタ自動車(株) 服部 祐人
本記事は、画像センシング展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
“人の役に立つ”パートナーとしてのロボット開発を目指す
トヨタグローバルビジョンは「笑顔のために。期待を超えて。」です。このスローガンのもと,お客様第一,お客様目線での仕事を進め,いいクルマづくりを通じて,いい町・いい社会への貢献を目指しています。その中でパートナーロボットの開発を「未来のモビリティ社会をリードする新しいライフスタイル」の提案と位置づけています。パートナーロボットのコンセプトは,“人の役に立つ”パートナーとしてのロボットです。そのためには,人の役に立つかしこさと人へのやさしさが必要で,パートナーロボットの開発により,明るい未来社会の一翼を担うことができればと考えています。
これまでのロボット開発の歩みを振り返って見ますと,80年代の産業用ロボットの開発から始まり,工場の自動化を実現するために溶接ロボットを開発。90年代には汎用化の方針のもと,複数の車種や複数の色に対応できるようになりました。近年では人をアシストする「人協調型のロボット」の実用化も進めています。そして,製造現場で培った数々のロボット技術をもとに,人と共存し,人の役に立つパートナーロボットの開発へと進化させてきました。2005年には,愛・地球博においてヒューマノイドロボットによる楽隊演奏を行い,歩行技術や道具を使う技術を。2010年には上海万博において,バイオリンの演奏を行い,道具を使う技術がさらに進化したことをご覧いただきました。
2007年にはパートナーロボットの開発ビジョンを発表し,研究開発の段階から実証フェーズへの移行を開始しています。私たちは大きく4つの領域で人を支援するパートナーロボットの開発を進めています。「製造モノづくり支援」領域では,ウィンドウ搭載やスペアタイヤ搭載支援を実用化し,社内の製造ラインで稼働させています。「パーソナル移動支援」の領域では,立ち乗り型の小型移動ロボットWingletの実証運用。「介護・医療支援」の領域では,移乗支援や歩行支援ロボットの開発を進めています。そして「生活支援」の領域では,より知的な作業を行う移動サービスロボットとして生活支援ロボットHSR(Human Support Robot)の開発を行っています。
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トヨタ自動車(株) 服部 祐人
2000年 長岡技術科学大学大学院修士課程修了2000年 株式会社リンクス入社,画像システム事業部勤務
2004年 トヨタ自動車株式会社入社,パートナーロボット部勤務