セミナーレポート

生活支援ロボットの開発 ~障がい者,高齢者,およびその家族や介護者のQOL向上のために~トヨタ自動車(株) 服部 祐人

本記事は、画像センシング展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

小型,安全,簡単操作を実現した生活支援ロボットHSR

 生活支援領域では,より知的なかしこい作業を行う移動サービスロボットとして,HSRの開発を進めています。2007年には,施設案内ロボットRobinaを開発しました。このロボットは,来場者を誘導しながら案内をしてくれるロボットで,障害物や人を回避しながら自律的に移動します。また,道具を使う能力としてペンを持って筆圧が一定になるように力を制御し色紙にサインをする機能を実現しています。2009年には,東京大学のIRT研究機構との共同研究で,アシスタントロボットARを開発しました。これはRobinaの技術をベースにした車輪型のヒューマノイドロボットで,掃除や片づけ,洗濯といった家事を行います。実験室レベルではいろいろなことができるようになりましたが,実用面では十分なレベルには達しておらず,特に家庭内を考えるとロボットが大きい,重いといった課題がありました。
 私たちが考えている生活支援ロボットは,誰でも使える一般家庭向けのロボットですが多くの技術課題があります。しかし,現在のロボット技術プラスアルファでも早くお役に立つことはできないかという観点から,まずは支援要望の強い障がい者の方あるいは高齢者の方をターゲットにロボットの開発をし,技術蓄積をして,最終的に一般家庭でのニーズに応えられるようにしていきたいと考えています。
 障がい者の方へのヒアリング結果では,物取りや遠隔コミュニケーションの要望が高いことがわかりました。その結果をもとに,支援を必要とする人が自分でロボットを操作して物を取ることができる「自立支援」と,離れた場所から家族や介護スタッフがコミュニケーションをし,簡単な作業を支援できる「遠隔支援」の2つのシーンを想定して開発を進めました。
 2012年の国際福祉機器展で生活支援ロボットHSRを発表しました。このロボットの特徴は,小型・軽量で,安全・安心,簡単操作ということにあります。折り畳み式のアームや必要に応じて上下に伸び縮みするボディーの機構,円筒の形状により,家庭内を動き回っても邪魔に感じないコンパクトさを実現しています。また,人の隣で作業をしたり,物を手渡したりするため,ロボットが人にぶつかることを前提とした安全設計を行っています。さらに,タブレット画面や音声から簡単に操作することができます。

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トヨタ自動車(株) 服部 祐人

2000年 長岡技術科学大学大学院修士課程修了
2000年 株式会社リンクス入社,画像システム事業部勤務
2004年 トヨタ自動車株式会社入社,パートナーロボット部勤務

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