セミナーレポート

QoLと生体センシング技術オムロンヘルスケア(株) 志賀 利一

本記事は、画像センシング展2015にて開催された招待講演を記事化したものになります。

地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献

 オムロンのヘルスケア事業の売り上げは1000億円を超え,グループ全体の12%を占めています。ヘルスケア事業でミッションに掲げているのが,「All for Healthcare-地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献」です。事業ドメインとしては,生活習慣病の予防・管理を中心に展開。製品としては血圧計をメインに,その周辺デバイスとして血圧の変化を分析するために必要となる機器を有しています。オムロンの血圧計は現在世界で約50%のシェアがあり,年間約1500万台から1600万台の血圧計を生産しています。製品としてはその他に,体温計,活動量計,体脂肪計,睡眠計などもあり,どれも世界トップクラスの製品となっています。
 QoLは,Quality of Lifeということで,生活の質と訳されます。WHO(世界保健機関)ででは健康の定義として「疾病がないということではなく,完全に身体的・心理的および社会的に満足のいく状態」としています。病気がないだけでは健康とは言わない。QoLもこうした上に立つものと考えます。いわば,ゼロというのが病気のない状態で,マイナス方向にあるのが疾病や介護。プラスの方向にあるのが健康や美容,幸福です。最近は“健幸”という言い方もされます。マイナスからゼロに持っていくのは日本で言えば国民皆保険です。しかし,プラスの方向は自分たちが自らお金を払ってゼロからプラスにしていかなければなりません。
 健康医療と言われるものは,医療情報なのか健康情報なのか。センシングの技術がどちらの領域で使われるかによって,ビジネスの形態は違ってきます。医療情報は疾病が対象で,高血圧や糖尿病,高脂血症,肥満症など病名がついており,治療に必要な指標を計測すれば情報として役に立ちます。一方,健康情報は健康不満者が対象で,何が不足しているかは千差万別です。ですから,健康を1つの指標で測ることはできません。

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オムロンヘルスケア(株) 志賀 利一

1982年山口大学工学部電気工学科卒業。1986年北海道大学大学院工学研究科生体工学専攻修士課程修了。同年(株)立石ライフサイエンス研究所,現:オムロンヘルスケア(株)入社。1998年北海道大学大学院工学研究科生体工学専攻博士課程(社会人選抜)修了。博士(工学)。現在:全社の技術戦略立案,技術管理,新技術探索・インキュベーションを担当。 専門分野:生体工学,医用電子工学,近赤外分光学,生体計測工学全般。

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