セミナーレポート
セキュリティ画像処理とそれを通して見た風景セコム(株) 黒川 高晴
本記事は、画像センシング展2015にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。
モノとコト,研究とビジネス,技術と社会
セキュリティ画像処理で今,我々が目指しているのは,「誰が,どこで,何をしているか」をセンシングしようということです。それが分かれば,高精度な状況の把握と,素早い正常の確保へ向けての対処が可能になります。そのためには,顔認証や属性解析,人物追跡,姿勢推定,行動解析,カメラ幾何学などの各技術の融合が必要になります。「モノとコト」「研究とビジネス」「技術と社会」など異質と思われる二者の共存・融合という問題は,画像処理の中にも頻繁に出現します。「モノとコト」ということでは,サービスを志向した製造業,モノ作りとサービスの双発を目指す社会の流れがあります。
しかし,ほとんどはモノからコトへの流れの議論で,コトからモノへの流れの議論がありません。実態として「いかにコトをやるか」に傾斜しているように見受けられます。それでいいのでしょうか。また「研究とビジネス」では,ビジネスは新しい価値・サービスを最速で提供することを目指しますが,それを原理主義的に貫くと,技術的発展が保たれないケースもあります。それはその都度,その商品に特化した応用しにくい技術となってしまう可能性があるからです。
ですから,異質と思われる二者の共存・融合ということでは,性質の異なる二者の中間を行きたいと思うわけです。その鍵を握るのは,「分野を超えた知見があるか否か」です。自分の利き足を軸とした知見の「ドメイン・トランスファー」。それが融合の一つの側面だろうと思っています。ビジネスと技術研究には良く似た点があります。例えば,研究で新しいアイデアに確信が持てるなら,思うよりも長い時間挑戦し続けることが大切です。
ビジネスでもそれは同じで,当社の創業者も,新事業の成功の秘訣は成功するまでやめないことだと言っています。分野が違うからといって,必ずしも自分の利き足を変える必要はありません。逆に,今まで培った利き足を存分に活かせば良い。利き足で得た知見を異なる分野にトランスファーすること。そして,それらを集合させること。異質と思われる二者の共存・融合には,これらが大事になると考えています。
セコム(株) 黒川 高晴
1997年,東京大学計数工学科計測専攻修士卒業。同年,セコムに入社。以降,画像圧縮,任意視点画像生成,移動カメラ監視,屋外監視,人物検知,人物追跡,セグメンテーションなど,コンピュータービジョンの研究開発に従事。2009年,IS研究所 画像新技術グループ リーダー。2012年よりIS研究所 ビジョンインテリジェンス・ディビジョン マネージャー。主な興味は中間ビジョンとビジョンアルゴリズムのアーキテクチャ。