セミナーレポート

フロント技術を活用した新しい健康・医療支援への取り組み(株)富士通研究所 柳沼 義典

本記事は、画像センシング2016にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。

医療フロント・チャレンジへの取り組み

 今,あらゆるものがインターネットにつながるIoTの世界が進んでいます。2023年には1兆個のセンサーがつながると言われています。このような流れの中で,私たちはセンシングとビッグデータを活用し,新しい医療サービスを構築していきたいと考えています。今日はそれらの技術を,「医療フロント・チャレンジ」,「診断支援に向けての基盤技術」,それらを「サービスとして提供するための技術と実証活動」という枠組みで個別に紹介をしていきます。
 「医療フロント・チャレンジ」では,ウェアラブルセンサーを開発し,在宅モニタリングの実証活動を行いました。患者に腕時計型のウェアラブルのセンサーをつけ,夜尿症を対象に時々刻々と得られる健康情報(行動・水分・環境データ)をクラウド上に収集・可視化。患者の日々の行動や状況などの容易な把握と,患者と医師との間での情報共有や予兆検知などを可能にしています。また,約1cm×2cmの超小型センサーによる姿勢計測のシステムを開発しました。現在は,ソフトなシリコーンシートによるバッテリーレスのビーコンをベースに,日常の情報を取得するシステム開発も進めています。
 さらに,スマートフォンやタブレット,パソコンなどの内蔵カメラやWebカメラで撮影した顔の画像からリアルタイムに脈拍を計測する技術を開発しました。これは,血液中に含まれるヘモグロビンが緑色の光を吸収する特性に着目し,血流から生じると考えられる顔表面のわずかな輝度変化を捉えて脈拍を検出する技術です。カメラで顔を撮影するだけで,脈拍数を最短5秒で算出します。実用的なものでは,カメラを用いて入院患者のベッドでの起き上がり(起床),ベッドからの立ち去り(離床)やベッド上での行動を高精度に検知する患者の状態認識技術も開発しています。他に最近の開発例としては,呼気に含まれるごく低濃度の生活習慣病との相関が示唆されているアンモニアなど,特定のガス成分だけを抽出して,短時間で濃度を計測できる携帯型の呼気センサーがあります。

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(株)富士通研究所 柳沼 義典

株式会社富士通研究所に入社後,ニューラルネットワーク,並列計算機アプリケーション,データマイニングの研究開発に従事。
1999年から2000年まで,英国Imperial College訪問研究員。
2009年よりヒューマンセントリックコンピューティングの技術開発,現在,次世代医療の実現に向けて研究開発を推進中。

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