セミナーレポート
産業ロボットの知能化と知能ロボット(株)三次元メディア/立命館大学 徐 剛
本記事は、画像センシング展2017にて開催された招待講演を記事化したものになります。
産業ロボットに目と脳を持たせる
私が代表を務める三次元メディアは,立命館大学発のベンチャーとして,2000年12月に設立されました。最初は大学の研究室でつくった3次元モデリングソフトをベースに事業を行っていました。その後,高精度の3次元計測に事業を転換。三菱重工と共同で,橋梁に使える3次元計測機を開発しました。これは,カメラで写真を撮り,橋梁のブロックの穴などの3次元計測ができるというものです。10mの構造物に対して0.1~0.2mmの三次元計測が可能です。また,NECと共同で全国の車検場で使われる3次元測定・画像取得装置を開発しました。しかし,この分野では大きなビジネスにはできないと感じ,2008年にロボットの目をつくろうということでさらに方向転換をし,現在に至っています。本年度からは,私たち自身で知能ロボットそのものをつくり販売します。
例えば,コンベヤーにパレットを載せて動かしている自動車の部品メーカーがあります。パレットの中には自動車のCVT(無段変速機)という部品が入っており,これを一つずつ取り出して加工するラインに供給します。しかし,部品は1個7.5キロもあります。人間が1日3000個運んで加工していましたが重労働になります。何とかロボット化したということで,当社の3次元ロボットセンサーを導入しました。上部からセンサーでCVT部品のそれぞれの3次元の位置と姿勢を計算し,それに基づいてロボットが取りにいくというものです。自動化することで生産ラインに従事していた5名の社員を2名に削減することができました。また,ロボットは24時間稼働できることから,生産能力が向上。人間の場合は疲れると落として傷をつけるということがありましたが,打痕発生もゼロになりました。
産業ロボットは従来からありましたが,私たちはそこに目と脳を持たせました。目は3次元認識,脳は見た結果に基づきロボット動作を制御するということです。従来のロボットであるアームにハンドと目をつけ,トータルで制御することで,自分で見て自分で判断して行動できるロボットができます。これを私たちは「知能ピッキングロボット」と呼んでいます。
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(株)三次元メディア 取締役代表執行役社長/立命館大学 情報理工学部 教授 徐 剛
1983年 中国から大阪大学に留学。1989年 博士後期課程を修了,工学博士。1989年~1990年 ATRにて奨励研究員。1990年~1996年 大阪大学基礎工学部助手・講師。1996年 立命館大学理工学部助教授。2001年 同教授。2004年 同情報理工学部教授。2000年12月 株式会社三次元メディアを設立・社長就任。その間,米国ハーバード大学ロボット研究所,マイクロソフト中国研究所,モトローラ豪州研究所,東京大学にて客員研究員。2012年 第5回ロボット大賞・中小企業庁長官賞を受賞。2015年 第13回産学官連携功労者表彰・経済産業大臣賞を受賞。2017年 Japan Venture Awards・中小機構理事長賞を受賞。