セミナーレポート
運転の自動化のための画像認識技術(株)東芝 研究開発センター 岡田 隆三
本記事は、画像センシング展2017にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。
走行路検出と周辺地図作成,画像認識ハードウエア
自動運転では,白線がない道路でもレーンキープアシストをしたいというニーズがあります。そのためには,入力画像から走行可能領域を検出する必要があります。従来はかなり難しい問題でしたが,最近では,深層学習(Deep Learning)を使い,物体領域分割での走路検出が可能になっています。物体領域分割(Semantic Segmentation)は,入力画面をConvolutional Neural Network(CNN,畳み込みニューラルネットワーク)に人力し,画像の各画素に何が映っているかを認識する技術です。前段では,局所的な特徴抽出を行う畳み込み演算と,局所ごとの特徴をまとめるプーリング処理を繰り返し,識別に有効な情報を抽出。後段では,抽出した情報を引き延ばし元の画像に戻すアップサンプリングをし,最後に識別器で画素毎に何が映っているかを認識します。一方,幾何処理の領域では,三次元再構成(SfM)という技術があります。これは,画像から立体構造(距離情報)とカメラ運動を同時に推定する技術です。画像の中から特徴点を検出。連続した画像の中でその特徴点がどのように動いていっているかを追跡し,特徴点マッチングをします。それらの情報を集め,カメラの運動推定し,高精度化していきます。そして,このカメラ運動推定をもとに,多視点ステレオ視で3D位置推定(点群)し,障害物/路面を検出します。これらの情報をまとめ上げたのが障害物地図(Occupancy Grid Map)です。グリッド状に空間を区切り,各セルに障害物の占有率を保持します。障害物地図によって,自己位置推定を用いた時系列情報の統合や複数センサーの統合が可能になり,ノイズに対して頑健になります。
東芝では,車載用の画像認識を行うためのLSIとして,Visconti™ファミリを提供しています。2015年発表した最新のものは,Visconti™4です。これまで説明してきた高度な認識処理を実行できる高い演算性能を持ち,低消費電力,高/低温動作,耐振動といった車載性能を満たしています。実際に,自動車検出,歩行者検出,距離推定,レーン検出など8つのアプリケーションを動かし実測したVisconti™4の消費電力は1.4W程度でした。現在,実車による自動走行の検証実験を進めています。
(株)東芝 研究開発センター 岡田 隆三
1999年 大阪大学大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。同年,(株)東芝入社。研究開発センターにて,車載画像認識,映像監視を中心にコンピュータビジョン技術,システムの研究開発に従事。2006年~2008年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員研究員。電子情報通信学会会員。