セミナーレポート

自分で考えるロボットの実現に向けてオムロン(株) 技術・知財本部 技術専門職 井尻 善久

本記事は、画像センシング展2018にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。

自分でアームの動きを考える

 「自分でアームの動きを考える」ためには,与えられたスタートからゴールに至るまで,設置された環境で周辺や自己に干渉しない動きを作り出すことが必要になります。顧客先の環境はそれぞれ違いますから,現場ごとに考えなければなりません。これらの分野は,モーションプランニングの研究が進んできました。モーションプランニングとは,障害物をよけながらゴールにたどりつく方法論です。迷路の探索では,効率の観点を抜きにして,壁に沿って進めばいいのですが,ロボットの場合,迷路の探索問題のようにはいきません。ロボットには関節があるので,手先がぶつからなくても肘がぶつかってしまうことがあり得るからです。
 6つのジョイントで構成される垂直多関節ロボットの場合,各ジョイント角度からなる6次元ベクトルを基本に考えていくことになります。6軸の垂直多関節ロボットの状態は,6つのジョイント角度を基底とする6次元のConfiguration Space(C-Space)と呼ばれる空間で決定されます。C-Spaceにおける一点からロボットの姿勢に対応させることを,n(FK)と言います。ロボットが取り得る全姿勢に対応する空間から,ロボットが干渉する空間を差し引くことで,ロボットが動作できる空間が求められます。FKを解いて実空間でのロボットの位置姿勢(状態)を求めることで,ロボットが障害物に干渉しているかチェックできます。スタートからゴールを結ぶ,周囲と干渉しない経路を見つけることが,モーションプランニングの問題設定になります。
 モーションプランニングのパラダイムは,大きくバッチプランニングと逐次プランニングの2つに分けられます。前者は,干渉物のマップが設定時と変化しないことを前提にしたものです。後者は,スタートからゴールに至る間に周りの干渉物が動いてしまうことを前提にしたものです。バッチプランニングには,非学習型と学習型がありますが,現在は非学習型が主流になっています。また,プランニングにはパスプランニングと軌跡(トラジェクトリ)プランニングがあります。
 パスプランニングにはいろいろな方法があり,例えばポテンシャル法という古典的な手法があります。これは,ゴールに引力,障害物に斥力を設定し,ポテンシャル場の中でボールが転がるようなイメージで,エネルギー最小化問題を解くものです。考え方はシンプルですが,全空間でポテンシャルを計算しなければいけないため,複雑な空間(3次元以上)での計算が膨大になります。そこで出てきたのが,ロードマップ法です。これは,ロボットの取り得るパスを事前に作っておく方法ですが,手法によってはC-Spaceの次元が高次元になった時に速度が低下することが多くありました。そこで,高次元空間を事前サンプリングしておく確率的ロードマップ法が出てきました。こうしたサンプリング法は必要にして最小限なサンプリングでゴールにたどり着けるため計算効率がよく,主流を形成してきました。現在はこれをプランニングの度に行う,(RRTに代表される)逐次サンプリング法を含めて代表手法となっています。そのほか,ノードの配置に関するコスト関数を軌跡まで考慮した最適化問題を解く,軌跡最適化法もアクティブな研究分野となっています。

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オムロン(株) 技術・知財本部 技術専門職 井尻 善久

2002年,京都工芸繊維大学大学院工芸科学機械システム専攻修士課程修了,同年オムロン株式会社入社。2012年,名古屋大学大学院情報科学研究科メディア科学専攻博士課程修了。2010年より奈良先端科学技術大学院大学客員准教授。人・顔画像処理・産業用画像処理,ロボティクスに関する研究開発に従事。2009年画像センシングシンポジウム高木賞,2009,2011年電子情報通信学会PRMU研究会研究奨励賞受賞。

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