セミナーレポート

超高齢化時代におけるみまもり工学 センシング技術への期待東京大学大学院医学系研究科 特任教授 森 武俊

本記事は、画像センシング展2018にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。

実住宅環境における生活計測

 実住宅環境における生活計測では,共通の課題があります。1つは,実際の住まいに設置するのはプライバシーの侵害感があり,数週間が限度ということです。もう1つは,計測専用の住宅環境を作って,そこに越してきてもらうと,通常の日常生活とは異なってしまうことです。
 そこで,私たちは,学生に1年間住宅を提供し,測距センサーを各部屋に1個配置し,3人の学生に各1年ずつ住んでもらうことにしました。その結果,典型的な軌跡例として,食事準備ではダイニングルームと,冷蔵庫や電子レンジのあるキッチンのあたりをウロウロしている。外出するときには,洗面台で鏡をチェックし,玄関へ向かう。寝る前はテーブルのあたりで勉強をしていたのが,トイレに行って寝る。このような行動パターンを把握することができました。
 どのようなところによく立ち止まるかというデータも簡単に取ることができました。そうすると,やはりイスがあるあたりや,布団の上げ下ろしをするあたり,洗面台,靴やスリッパを脱いだり履いたりするところでよく止まっていました。停留しているところは,洗面台や玄関,洗濯機前など,いずれも何か意味ある行動をしている場だとわかりました。停留,移動を識別することが重要だという知見が得られたのです。
 同じ人の場合,季節を問わず,驚くくらい同じところで留まっています。それらを記録しておくと,例えば,外出する前は,まずダイニングのテーブルのあたりに行って,次に財布がしまってある引き出しのあたりに行き,その後洗面台に行って,玄関に向かって出かけるというのが頻繁に起こります。こうした行動を分析することで,同じような行動を取り洗面台の方に向かったら,ほぼ間違いなく外出するだろうと予想することができるようになります。逆に,パターンから外れた場合,何か普段とまったく違うことが起こっている,異変が起こっているということが判断できるのです。
 このような技術を使ってできる例として,高齢者のみまもりサービスがあります。

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東京大学大学院医学系研究科 ライフサポート技術開発学(モルテン)寄付講座 特任教授 森 武俊

1995年,東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1995年,東京大学先端科学技術研究センター助手。1998年,同講師。2001年,米国マサチューセッツ工科大学 客員研究員。2002年,東京大学大学院情報学環助教授(准教授)。2010年,東京大学大学院医学系研究科特任准教授。2015年より現職。

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