セミナーレポート
NTTグループが描く未来農業日本電信電話㈱(NTT) 研究企画部門 プロデュース担当部長 久住 嘉和
本記事は、画像センシング展2019にて開催された招待講演を記事化したものになります。
IoTによるセンシングシステムの活用
センシングシステムの活用例としては,IoTを稲作に活用した水位・水温センサーによる圃場遠隔監視サービスがあります。水田に設置したセンサーから,水位・水温などの情報を収集し,いつでもどこからでもスマートフォンで圃場の状況が見て取れます。すでに40以上の自治体に導入されていて,水田センサーの見回りにかかる労力の削減や,収集したデータの分析による品質・食味の向上が効果として挙げられています。一方,自動水栓・水門との連携によるさらなる効率化が求められています。農機メーカークボタとの取り組みでは,水田センサー等によりモニタリングした圃場や収穫の状況を営農支援システムに収集し,自宅や農機からの見える化を実現することで,農家の収益倍増をめざしています。また,福島県のJAふくしま未来におけるICT活用では,運用上の課題とシステム導入上の課題を解決した事例があります。桃などの果樹の生育課程では,降霜は重大な被害をもたらすため,危険温度となる前に園地内で燃焼剤を燃やし,空気を対流させることで温度を上げ,降霜被害を防止していました。そのため,職員・組合員約60人が当番制で福島市内56か所の温度観測点の見回りをしており,運用上では効率化の課題がありました。また,観測温度計の精度や通信コスト,観測装置への電力の確保などのシステム導入上の課題もありました。そこで,「eセンシングForアグリ」というサービスを使って,太陽光パネルにより環境データを電源がなくても収集しています。無線通信(LPWA)のためモバイル回線が不要で,スマートフォンで必要なときに環境データを見ることが可能になりました。また,あらかじめ閾値を設定しておけば,安全限界温度に近い温度を計測した時にはメールで警報をお知らせします。それにより,対応する職員・組合員数を,60名体制から3名体制へと大幅に軽減することができました。
さらに,将来の研究開発として,土に還る電池,人口光合成等,食農分野に資する研究開発テーマにも取り組んでいます。
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日本電信電話㈱(NTT) 研究企画部門 プロデュース担当部長 久住 嘉和
日本電信電話㈱に入社。以降,設備企画,外資営業,企業買収,グローバル事業展開,技術開発戦略などを経て,2014年8月より現職(NTT研究企画部門プロデュース担当部長)。