セミナーレポート
NTTグループが描く未来農業日本電信電話㈱(NTT) 研究企画部門 プロデュース担当部長 久住 嘉和
本記事は、画像センシング展2019にて開催された招待講演を記事化したものになります。
AIを活用した具体的な取り組み
NTTグループでは,NTTグループ全体のAI技術を活用した取り組みを「corevo(コレボ)」という名称でブランド化し,様々なプレイヤーの皆様とともに変革を生み出していきたいと考えています。具体的な取り組みとしては,まず音声認識技術による農作業記録があります。スマートフォン等に話すだけで簡単に作業を記録し,自宅にいながら登録した作業の確認や匠の技の共有,営農指導への活用ができます。農業データ連携基盤(WAGRI)に対して,すでに気象・地図サービスを提供していますが,3つ目のAPI(Application Programming Interface)としてこの農業作業記録の簡易化を目的とした音声認識技術の提供を検討しています。また,気象予測の活用として,NTTグループの気象会社HALEX(ハレックス)のオリジナル気象システム「HalexDream!」を通じて,気象庁のビッグデータを独自の手法で解析し,日本各地の天気を1 km単位で30分ごと,最大72時間,1~3か月先まで予測可能にしています。さらに,酪農分野では,AI等を活用した霧発生予測に取り組んでおり,加速度センサーとAIを用いた牛の発情・疾病予兆を発見するツールを提供するとともに,豚の体重をAIが推定するアプリ「デジタル目勘」の提供も予定しています。 一方,漁業関係では,免許や許可もなく大量の海産物を捕る密漁が横行する中,AIとドローンを使って密漁を監視する新たなシステムを開発しました。海賊船や時間などのデータを蓄積し,AIによって怪しいと思われる画像をキャッチすると,ドローンが現場に向かうので,漁業密漁の抑止効果が期待できます。
最後の事例は,日本版GPSの準天頂衛星みちびきを使い,AIとドローンを組み合わせ,追加肥料や農薬をまく時期と場所を自動で判断し,散布作業を無人化するみちびき営農ソリューションです。日本初のみちびき対応ドローンは非常に高い精度で,かつ航空管制の技術を活用して複数台のドローンの飛行制御を行い,農作物の画像を撮影や肥料や農薬の散布作業ができます。それにNTTグループのAIとを掛け合わせ,画像分析し,生育診断,病害虫診断・病害虫予測を行い,収穫量を最大30%のアップをめざします。
NTTグループでは,産官学で連携し,他にも,加工・流通・販売・消費・輸出というフードバリュー全体での新たな価値を創造していきたいと考えています。
日本電信電話㈱(NTT) 研究企画部門 プロデュース担当部長 久住 嘉和
日本電信電話㈱に入社。以降,設備企画,外資営業,企業買収,グローバル事業展開,技術開発戦略などを経て,2014年8月より現職(NTT研究企画部門プロデュース担当部長)。