セミナーレポート
オムロンのコア技術“Sensing&Control+THINK”の集大成 卓球ロボットFORPHEUS-「人と機械の融和」の実現に向けて-オムロン(株) 技術・知財本部 センシング研究開発センタ 研究員 中山 雅宗
本記事は、画像センシング展2019にて開催された招待講演を記事化したものになります。
卓球ロボットの開発史と今後の進化の方向性
卓球ロボットFORPHEUSは,「融和」を目指して進化してきました。2014年,人と機械の新しい関係を象徴するラリー継続卓球ロボットをCEATEC JAPAN 2014で初めてお披露目しました。翌2015年には,ロボットからの返球位置を卓球台に表示することでラリーが継続するコーチングを実現し,「世界初の卓球トレーニングロボット」としてギネス世界記録認定も受けました。2016年には,3ラリーでプレイヤーレベルを精度90%以上という高精度で分類し,そのレベルに合わせてロボットの返球が変化する「人に合わせてラリーするAI卓球ロボット」を実現しました。2017年には,初心者には難しいサーブの代替,上級者にはスマッシュ対応により,初心者から上級者まで多くの方々とラリーが可能になりました。さらに,2018年の最新モデルでは,「黒帯エキスパート」というコンセプトで,ボール・プレイヤー・ラケットデータを取得するビジョンシステムをはじめ,ロボットの筐体自体を完全に一新させ,人の技巧や意図を理解し伝える卓球ロボットを実現しました。機能の進化としては,高速高精度なロボット制御で,ドライブやカットなど,多彩な「回転打球技術」により打ち方を繰り出します。プレイヤーの動作から,打球コースや回転を打球前に予測して備える「人動作予測技術」も実現しています。プレイヤーレベルに合わせてラリーを行い,上級者とプレイヤーの動作差異を分析し,適切な打ち方を教える「人理解技術」を備え,プレイヤー能力とコーチング能力を飛躍的に向上させました。
オムロンでは,人と機械の関係性においては「融和」を目指すべきだと考えています。卓球ロボットFORPHEUSは,世界各国の展示会やイベントで人と機械の融和をアピールしてきました。世界が想定する人と機械の未来は,シンギュラリティという言葉に代表されるように,機械(成長する存在)が,人(変わらない存在)を追い越すと言われています。しかし,オムロンが目指す人と機械の未来は,機械と人がともに成長し,高め合い,お互いの限界を超えていくという共進化です。私たちは卓球ロボットを通じて,世の中の人々の未来観にパラダイムシフトを起こしていきたいと考えているのです。
オムロン(株) 技術・知財本部 センシング研究開発センタ 研究員 中山 雅宗
2015年 京都大学工学部物理工学科卒業 2017年 京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻修士課程修了 2017年 オムロン株式会社技術・知財本部センシング研究開発センタ(現職)。卓球ロボットFORPHEUSのビジョンシステム開発リーダー