セミナーレポート

国際画像セミナー特別招待講演 「高速画像処理とその応用」を聞いて東京大学 石川 正俊, 他

本記事は、国際画像機器展2010にて開催された【特別企画】 最新画像処理 鼎談を記事化したものになります。

「30Hz」の意味が分からない

北川:先生が十数年前に開発されたビジョンチップ,開発のきっかけは何でしょうか?

石川:きっかけは触覚センサーの研究でした。触覚にも視覚にも,同じパターン処理が使えることが分かっていました。触覚には分布型のセンサーが必要です。これ向けにパターン処理LSIを作りました。しかし,LSIですのでチップが1000個以上できちゃったのです。触覚センサー向けには少数あれば十分だったので,残りをやってみたかったビジョン用途に使いました。
 ちょっと脱線しますが,ある米国の企業が64×64個の触覚センサーを作り,これをディスプレイにつなげるシステムを2000万円で売り出したと聞き,当時の私は「おかしい」と思ったものです。うちの研究室では触覚センサーが出力したデータをビデオ信号に変換し,色の濃淡で触覚を表現しました。そうすれば,記録にはビデオテープが使えるし,市販の安い画像処理装置も使える。この結果,米国企業と同様のシステムを500万円以下で作ることができました。
 一方で,計測自動制御学会で論文賞を取った別の触覚センサーは誰も買ってくれませんでした。心の底から素晴らしい方式だと思ったのですが。世の中に貢献するのは,理論がしっかりしてるだけのものでもなく,材料が良いだけのものでもなく,やっぱり便利なものなのですね。
 触覚センサーを開発している時に感じたのが「処理」の大切さです。触覚センサーを扱っていると,最初に「フレームレートをどうするか」という問題に直面します。触覚のサンプリングに関しては何も決まりがないからです。しかし一方で,信号を画像系に持ってくると,いきなり「30Hz」という壁に突き当たります。それを大変疑問に思って,各学会で視覚フィードバック制御について発表している人のところに行っては,「なんで30Hzなのですか?」と繰り返し質問しました。結局,はっきりした回答は得られませんでしたが。 特にCCDの使い勝手がこうした目的には良くありません。なぜなら,設計時にフレームレートを決めなければならないからです。そこに1/30秒というレートが使われていました。しかし,CMOSは後から変えられます。想定しているフレームレートはほぼないと言っていいでしょう。高速画像処理にはCMOSが絶対条件です。さらに可変サンプリングレートがあればベストです。

猿田:デバイスが変わることによって新しいマーケットが出てくる可能性がありますね。

石川:そうです。新技術はマーケットも一緒に開発しなければなりません。日本における研究開発の最大の欠点は,マーケットのないところに投資できないことです。

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東京大学 石川 正俊, 他

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