セミナーレポート

注射の悩み,解決します:近赤外蛍光インプラントの開発とその可能性高知大学 佐藤 隆幸

本記事は、国際画像機器展2012にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

ICG近赤外蛍光カラーイメージングが医療分野で普及

 生体透過率が高い近赤外光の医療応用では,インドシアニングリーン(ICG)蛍光による生体構造物の可視化技術が普及しています。これは手術中の外科医が血管やリンパ管,リンパ節を見ることができるようにするもので,ICGは人体に注入できる唯一の近赤外蛍光を発する薬剤です。ICGを皮下に注入すると,リンパ管に吸収されるので,体外から,皮下2cmまでは透過する760~780nmの近赤外光(励起光)を照射します。それによって,ICG分子が励起し,800~850nmの近赤外蛍光が皮膚を透過して,カメラに捕捉されます。
 ICG蛍光による生体構造物の可視化技術はセンサーがポイントですので,半導体メーカーに高感度のセンサーを開発してもらいました。さらに非常に明るい手術室で蛍光が見えるようにするために,光学機器メーカーに特殊光学系を開発してもらいました。そして,完成した試作機を,肉眼では見分けるのが難しい,乳がん患者でがんの転移を見分けるカギとなるセンチネルリンパ節手術に使いました。その結果,今まで300症例以上で,100%正しく見分けることができています。
 また,心臓バイパス手術でも大きな効果を発揮します。心臓はイラストなどでは血管が表面を覆っているように見えますが,実際には何ミリかの脂肪が雪のように降り積もっています。今までは,あらかじめレントゲンなどで撮影し,心臓外科医は血管の細くなっている部分を覚えておいて,バイパス手術をしていました。それに対して,ICGを静脈内投与すると,まず右心房が光ってきて,次第に冠状動脈および心臓が光ってきます。心臓外科医は手術の結果,血液がどのくらい勢いよく流れるようになっているのかを知りたいわけです。そこでICGを入れることで,手術がうまくいけば,毛細血管まで血液が灌流していき,心臓全体が光るようになります。

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高知大学 佐藤 隆幸

1985年 高知医科大学医学部 卒業
東京女子医科大学循環器内科、国立循環器病センター研究所を経て
2000年 高知大学医学部 循環制御学 教授
専門:医工学、循環器学

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