セミナーレポート
次世代液晶プロジェクタ組立調整ロボットの開発~人感性に迫る画質・光学調整技能の自動化~NECグリーンプラットフォーム研究所 野崎 岳夫
本記事は、国際画像機器展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
■ロボット実現に求められる画像処理に関する課題
光学ユニットとして「OPT-ASSY」というものがあります。これは,RGBの液晶のパネルをUV接合によってダイクロイックプリズムに接合したものです。このRGBのパネルは6自由度の光軸の調整が必要で,200μmといった範囲で調整が行われています。具体的な検査・調整には「フレア検査」「フォーカス調整」「コンバージェンス調整」という3つがあります。高輝度化・高精細化は製品にとっては望ましいことですが,生産側・組立側にとっては非常に難しいもの(スキル)を要求されます。特に,フレア検査では,極薄フレア,薄いフレア,濃いフレアをそれぞれ人が目視で判定していますが,熟練していないと微妙な認識ができません。フォーカス調整は集光特性の最大化を目的としたもので,画像の切れやボケを調整するもの。コンバージェンス調整は,RGB各画素の重なり,色位置合わせを調整するものです。
ロボットを実現する上での課題としては,光工学部品の組み合わせや投射レンズごとに,投射映像の画郭の大きさ,明るさ,投射パターン,フォーカス位置が毎回変わってしまうということが挙げられます。また,画像撮影時のモーター振動,工場内の振動,反射光の映り込み,電磁ノイズの影響などを排除しなければなりません。さらに,人の判断では画質の定量化や光軸動作の最適化が難しいということや,最終的にパネルを接着する時の固着ズレに対する投射画質の低下防止という課題もあります。こうした中で,ロボットには,熱,振動,紫外線,部品バラツキ,環境等にロバストなメカ機構,光学系,撮像系,画像認識技術が求められました。
プロジェクタの組立・調整では,機構駆動時の歪み対策や,UV接着剤の固着時のズレ対策,投射ランプの発熱対策が課題となっていました。こうした課題に対して,技術ポイントとして,ナノ分解能の超精密ステージ機構設計と,同時に新照明光学系&チャック部の高密度実装設計を実現しました。また,フレア識別では,人の官能に頼る投射画質判定からいかに脱却するかが課題でした。技術的には,ヒストグラム上のピークと谷をはさむ領域を探索。頻度情報の波形特性でフレア閾値を自動設定することで,ベテラン作業者の目視フレア境界とほぼ一致させることができました。この技術をフレア検査自動化モジュールとして採用しています。
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NECグリーンプラットフォーム研究所 野崎 岳夫
※所属は発表当時。現在は情報・メディアプロセッシング研究所に所属。
1987年,日本電気株式会社入社。同社,生産技術研究所においてレーザー,画像認識を応用した組立・検査装置の研究開発に従事。1991年~1992年 米国スタンフォード大学ロボット研究所客員研究員。中央研究所異動後は,主としてカラー表示デバイス,プロジェクタ製品向け画像処理および,画質調整ロボットの研究開発に従事。日本ロボット学会正会員。