セミナーレポート
ドライバの安心を支えるクルマのUI(ユーザーインタフェース)のための画像処理技術(株)富士通研究所 水谷 政美
本記事は、国際画像機器展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
■視線検知,眠気検知,音声合成などによりドライバの安全を確保
5番目の技術は「視線検知技術」です。スマートフォンをはじめとする持ち込み端末の普及により,前方不注視が増加しています。そこで,ドライバの危険な目視行動を検知し,安全運転をサポートしていくために,車の中でも適用可能なロバストな視線検知技術の開発に取り組んでいます。これまで当社では,精度が見込める近赤外線LEDとカメラを用いた角膜反射法を採用。小型カメラ1つとチップLEDを利用し,「視線アシスト機能」をPCに搭載してきました。これらの技術を応用し,視覚特性・光学特性に基づく知識ベースを活用した画像処理により,運転中の不鮮明な画像からでも瞳孔と角膜反射の正確な検出を実現しています。この技術を視線の安全運転支援に活用することを考えています。6番目の技術は「眠気検知技術」です。これは,眠気を事前に検知してドライバの安全を確保するためのものです。独自の光学系イヤークリップ・センサーで運転状況下でも心拍信号を高精度に取得。脈拍以外の信号を効果的に除去する信号処理技術で,心電計との一致率99.7%とノイズに強いものとなっています。また,独自開発の心拍信号の周波数揺らぎ解析で,高精度な眠気検知を実現します。開発方式は,従来方式に加え,個人毎に異なる心拍揺らぎの固有周波数を追跡し,軌跡パターンから眠気を総合的に判断。個人差に強いということも特徴になっています。
7番目の技術は「音声合成技術」です。多彩な声やトーンで,運転状況に合わせた音声通知を可能とし,ドライバの判断や行動を加速・支援します。音声の効率的なパラメータ化手法により,少量の収録音声でも高品質な声のDBが作成可能で,パラメータ制御により声のトーンが調整可能になっています。また,開発技術の特徴として,HMM音声合成をベースに,音声波形変換時に必要な“息づかい”に関するパラメータを安定的に推定する技術を開発。従来技術に比べて多彩な声やトーンなどの表現力を向上させています。
(株)富士通研究所 水谷 政美
1995年,東京工業大学大学院修士卒業,同年,(株)富士通研究所入社。以後,画像処理・画像認識技術および,ITS分野を含む応用システムの研究開発に従事。
2003-2004年,米国コロンビア大学客員研究員。