セミナーレポート
社会の安心・安全を支える顔認証技術の紹介NEC バイオメトリクス研究所 高橋 巧一
本記事は、国際画像機器展2018にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
顔認証の関連技術の紹介
顔認証の仕組みは,2枚の顔画像が同じ人か違う人かをコンピューターに判断させるものです。そのために,あらかじめシステムに登録していくものを登録画像,その登録画像に照合させる画像を照合画像と言い,両者の似ている度合いを0~100%で表示します。最初に,画像中から顔を見つける顔検出を行います。次に,目,鼻,口など顔の特徴点を見つけます。映っている画像は斜めを向いていたり,大きさもバラバラです。向きや大きさを整えるのが,顔の正規化処理です。そこから,顔認証を使うために有益な数値を取り出していきます。これが特徴量です。特徴量を使い数値計算を行うと,本人度を0~100%で出すことができます。今の顔認証では,ほぼ深層学習が使われています。深層学習を利用することで,性能を飛躍的に向上させてきました。今や,人間の識別性能を超える性能を有しています。こうした顔認証技術のNECの事例を紹介します。1つ目は,先ほども紹介した2006年のユニバーサル・スタジオ・ジャパンの顔パス入場,2つ目はコンサートのチケットの転売と円滑な入場を実現するチケット本人確認システム,3つ目は450万枚の犯罪者データベースから,監視カメラで撮影された容疑者の映像を特定したシカゴ警察の事例などがあります。
顔認証は,ほかの映像解析技術と組み合わせることでいろいろなことが可能になります。顔認証に,混雑度,人数カウントなどを組み合わせることで警備員の警備に役立てることができます。また,年齢,性別,視線分析を組み合わせることで,リテールなどの顧客行動解析ができるようになります。NECが発表した関連技術としては,1つ目に遠隔視線推定技術があります。顔検出の情報をもとに向いている方向を推定し,10 m離れた場所でも,複数人のリアルタイムの推定が可能になっています。2つ目は,群衆行動解析があります。一人ひとりを個別にとらえて解析するのではなく,群衆のままカメラ映像を解析します。これにより,混雑している場所が特定でき,警備員の適正配置などが可能になります。
NEC バイオメトリクス研究所 高橋 巧一
2015年 慶應義塾大学大学院・理工学研究科にて博士号取得。現在,NEC・バイオメトリクス研究所にて,顔認証の研究開発に従事。