セミナーレポート

医療画像へのAI応用とその未来大阪公立大学 健康科学イノベーションセンター スマートライフサイエンスラボ 特任准教授 植田 大樹

本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

AIの医療応用

 次に,AIの医療応用として,当大学病院で力を入れている研究を紹介します。私たちは,AIを用いて,胸部レントゲン写真から僧帽弁逆流症・大動弁狭窄症を検出補助するモデルを作成しました。僧帽弁逆流症・大動弁狭窄症それぞれに対するAUC(有用性の値,1に近づくほど良い)は0.8以上,感度・特異度では約0.75を達成しています。これは放射線科医にはできないタスクです。AIがどこを見ているのかを知ることもでき,AIの捉えた特徴を視覚化すると,それぞれの疾患による変性を捉えていました。
 僧帽弁逆流症は最も頻度の高い弁膜症です。通常は聴診で見つけ,エコーで診断します。私たちのモデルは聴診の感度・特異度を上回っており,レントゲン数は約1万例使っています。症状は,軽症,中症,重症と大きく3つに分かれます。軽症は見つけにくいところがありますが,中症以上になれば感度・特異度が上がって,かなり高い確率で見つけられます。AIの特徴の可視化では,ヒートマップで現れたエリアと理論上病変が生じるエリア(つまり左房など左心系)が一致しているという結果が出ています。
 大動弁狭窄症も同じで,AUCは0.83で,感度・特異度はそれより少し上がっています。大動弁狭窄症では,まず大動脈弁に石灰化が起きます。AIの特徴の可視化では,CTで示された大動脈弁の石灰化と一致したところと左室に強いヒートマップが出ており,理論とAIの一致が見られています。
 胸部レントゲン写真から僧帽弁逆流症・大動弁狭窄症を診断するAIモデルでは,特徴部位を可視化すると,それぞれの弁膜症の心臓の形態学的変化にあった部位に注目していることがわかりました。これらの結果から,胸部レントゲン写真には,僧帽弁逆流症・大動弁狭窄症の診断に役立つ特徴が内在することが示されました。
 また,AIを用いて,胸部レントゲンから,左室がどれくらい全身に血を送れるかという左室駆出室(LVEF)を分類するモデルも作成しています。これも,AIは高い精度で分類できています。

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大阪公立大学 健康科学イノベーションセンター スマートライフサイエンスラボ 特任准教授 植田 大樹

2021年3月 大阪市立大学大学院医学研究科放射線診断学・IVR学 博士課程修了 2021年4月-現在 大阪市立大学 健康科学イノベーションセンター 特任准教授 主な業績として,RSNA(放射線科世界最大の学会)The Best of Radiology受賞(2019年),Eirl Aneurysm PMDA認証(日本初のDeep Learningの医療機器認証)(2019年),日本医学放射線学会 最優秀賞(2020年),Eirl Chest Nodule PMDA認証(2020年)

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