セミナーレポート
ロボットが目で見たものを掴むまで 3次元ビジョンセンサー,認識アルゴリズム,認識と動作のキャリブレーションを組み合わせる三菱電機(株) 堂前 幸康
本記事は、画像センシング展2013にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
認識と動作のキャリブレーションで考えたように掴む
もう1つの物体の掴み方として,最近トレンドになっているのが掴みやすい部分を探すという方法です。これはハンドが差し込めるすき間を持った領域を探すもので,荒っぽいやり方ですが,距離データ上の何かを掴むことができます。一般的なやり方でロボットの把持姿勢計算を解くと,6パラメーターを計算しなくてはならず処理時間が長くなってしまいます。そこで,最小限の動作でピッキングできるようにすることを目指して,3次元センサーによる把持姿勢計算の簡略化を行い,3パラメーターの計算で把持を可能にしました。このとき,ハンドの進入領域とセンサーの視線方向を一致させることで,つめ領域半径,ハンドの開き幅という2パラメーターでハンドがモデル化できます。距離データとハンドパラメーターだけから掴みやすさを評価するアルゴリズムで,物体を挟んで取り出します。物体の位置姿勢認識と掴みやすい部分の探索という2つの方法には,それぞれ一長一短があり,掴みやすい部分の探索は処理時間を優先する場合に有効です。
最後は考えたように掴む,センサーの認識とロボット動作のキャリブレーションです。そのためには,ビジョンの見た位置とロボットの動作位置を合わせる必要があり,三菱電機では産業用ロボットアームの手先に独自開発の3Dセンサーを取り付けました。ロボットとセンサーのキャリブレーションには2つの方式があります。1つは,マーカーを用意して3Dビジョンセンサーでマーカー位置を測定,ロボットで突いて,ロボット座標位置を算出するものです。もう1つはロボット座標は未知のままで,姿勢を変えて,マーカーを複数回観測するものです。
両方とも生産現場で使いやすいように提案されましたが,違いがあることが分かりました。物体の位置姿勢認識は生産現場に持っていくと,作業時間がかかってしまいます。それに対して,掴みやすい部分探索による高速バラ積み取り出しはネジ,バネなど部品の形状が変わっても,素早く掴むことができ,汎用性が高く,スピードも速いです。
こういった技術を統合して,柔軟物も扱えるセル生産システムを開発しました。初期のシステムではコネクタの姿勢の認識に時間がかかり,動作も安定しませんでした。そういった経験を基に,その後,掴みやすい部分を探して掴む方式が生まれ,どんな形の部品にも汎用的に対応し,バラ積みでの部品供給の自動化ができるようになりました。
三菱電機(株) 堂前 幸康
- 2004年
- 北海道大学工学部システム工学科卒業
- 2006年
- 北海道大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻修了
- 2008年
- 北海道大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻博士後期課程単位取得退学
- 2008年
- 三菱電機株式会社入社、先端技術総合研究所勤務
- 2012年
- 北海道大学情報科学博士