画像センシングの最前線
QoL(Quality of Life)向上のための画像センシング技術慶應義塾大学 青木 義満
2. QoL向上のための画像センシング・パターン計測事例
2.2 “人を見守る目”を提供する画像センシングシステム
少子高齢化社会を迎え,特に医療・福祉分野におけるQoL向上を目的とした研究開発が,日本政府のサポートの元に活発に進められている.例えば,経済産業省の「ロボット介護機器導入実証事業」*[2]においては,介護現場において実際に活用できるロボットシステムの導入を進め,高齢者の自立支援、介護実施者の負担軽減を通して、健康長寿社会の実現に寄与することを目的とした事業のサポートが行われている.その中で,画像センシング技術,センサ技術を導入した高齢者の見守りシステムが提案・導入され,社会の高い関心を集めている.イデアクエスト社では,認知症患者用の非接触ベッド見守りシステム(OWLSIGHT)の開発を進めている*[3]. 目に見えない赤外光の輝点群をベッド上に照射し,それを基線長の異なる2つのカメラで撮影することで,被介護者の三次元的な姿勢情報を取得する.事前に収集した危険姿勢(離床,立ち上がり,もたれかかり等)と安全姿勢から,危険状態を検知するニューラルネットワークを学習・構成することで,被介護者の危険な状態を数秒で検知し、状態に応じて,「危険」「要確認」を介護者の端末に通報することが出来る.これにより,被介護者のそばで常時見守るといった介護者の肉体的・精神的負担の軽減が期待できる.現在,いくつかの介護老人保健施設での実証試験・導入が進んでいる.<次ページへ続く>
*[2] http://robotcare.jp
*[3] http://www.ideaquest4u.com/products/products01/
慶應義塾大学 青木 義満
群馬県高崎市生まれ。1996年早稲田大学理工学部応用物理学科卒業、2001年、早稲田大学大学院博士課程 理工学研究科物理学及応用物理学専攻修了。博士(工学)。
早稲大学理工学部助手、芝浦工業大学工学部情報工学科助教授を経て、2008年より慶應義塾大学理工学部電子工学科准教授。
2013年より、株式会社イデアクエストの取締役を兼任し、慶應理工発画像センシング技術の医療分野での実用化を目指している。専門分野は知覚情報処理・知能ロボティクス、メディア情報学・データベース、計測工学、医用システムなど。