ダイヤモンドのNV中心を用いた温度計測に成功筑波大学,北陸先端科学技術大学院大学
高純度のダイヤモンドは結晶学的に対称性が高く,対象点を中心に結晶を反転させると結晶構造が重なる空間反転対称性をもっている。結晶の対称性は,結晶の光学的性質を決定するうえで重要な役割を担っており,空間反転対称性の有無は,非線形光学効果の発現を左右する。
筑波大学と北陸先端科学技術大学院大学の研究チームは,近年,ダイヤモンド結晶にNV中心を人工的に導入し,ダイヤモンド結晶の反転対称性を破ることで,2次の非線形光学効果である第二高調波発生(SHG)が発現することを報告した。このSHGは,結晶にレーザー光を照射した際に,そのレーザー周波数の2倍の周波数の光が発生する現象である。
この成果を基に,本研究では,20~300 ℃の温度範囲において,SHG強度の変化を調べ,高温では屈折率変化による光の位相不整合によりSHG強度が大きく減少することを発見したと発表した。本研究成果は,ダイヤモンドベースの非線形光学による温度センシングの実現に向けた効率的かつ新しい方法を提示するものと言える。