タンパク質結晶に閉じ込めた分子の反応,レーザーで可視化東京工業大学,筑波大学,東北大学,理化学研究所
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東京工業大学などののグループは、化学反応性を持つ金属錯体をタンパク質結晶に固定化し、X線自由電子レーザー(XFEL)と量子古典混合(QM/MM)計算にて化学反応中の金属錯体の構造変化をナノ秒レベルで原子分解能追跡し、反応機構を解明する技術を開発した。
人工分子反応時に生じる活性種の構造変化を実時間・原子レベルで追跡することは、従来困難であった。今回、タンパク質結晶の細孔中に水分子が多いことに着目、溶液中のようなタンパク質環境に金属錯体のマンガンカルボニル錯体(Mn(CO)3)を固定化し、結晶を保持しつつ光照射にて金属–CO結合の開裂反応の駆動に成功した。XFELでMn(CO)3錯体を固定化したリゾチーム結晶へ光を照射し反応開始後わずかな時間(10ナノ秒、100ナノ秒、1マイクロ秒後)の構造変化を観察したところ、CO配位子が選択的に順次解離した。さらにQM/MM計算でリゾチームのタンパク質環境によって反応が制御されることを明らかにした。