ワニのヘモグロビンをクライオ電子顕微鏡で解明 長時間水に潜れる秘訣とは横浜市立大学,Aarhus大学,Nebraska大学,大阪大学
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横浜市立大学などのグループは、ワニのヘモグロビンの立体構造とそのアロステリック制御*に関わる重炭酸イオンとの結合様式を、クライオ電子顕微鏡単粒子解析**により明らかにした。
脊椎動物の血液で酸素を運ぶヘモグロビン。酸素がヘムに結合すると、ヘモグロビン4量体はR(Relaxed)型という「開いた」構造、酸素が外れるとT(Tense)型という「閉じた」構造をとる。脊椎動物のヘモグロビンの構造変化は、有機リン酸の作用で制御されるが、ワニは例外で有機リン酸の作用を受けず、重炭酸イオン (HCO3−) の作用を受けるため長時間の潜水で酸素が供給できる。この作用の解明にはワニのヘモグロビンの立体構造の分子レベルでの解析が必要だが、ワニのヘモグロビンは良質な結晶が得られず、X線結晶構造解析による構造決定に至っていない。
今回、ワニの血液からヘモグロビンを精製、クライオ電子顕微鏡で構造解析した結果、酸素結合時の状態と一酸化炭素結合時の状態、酸素解離時の状態での立体構造を明らかにし、重炭酸イオンの結合に重要な、ワニのヘモグロビンにおけるアミノ酸置換を特定した。
今回の成果で脊椎動物のヘモグロビン分子進化における知見提供とともに、鎌状赤血球症等で心肺機能の弱い患者に対する遺伝子治療や輸血用人工血液といった医療への応用も期待される。
*ヘモグロビンの一つのサブユニットに酸素が結合すると、連鎖的に4量体の他のサブユニットにも構造変化が伝わり、酸素に対する親和性が向上する仕組み。
**クライオ電子顕微鏡を用いて、約-180℃のでタンパク質などの試料に電子線を照射して撮影、得られた粒子像から三次元構造情報を再構成して、分子の立体構造を解析する手法。
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