有機フォトン・アップコンバージョン粒子による神経細胞の光操作に成功九州大学,東京大学,東京医科歯科大学(東京科学大学),神奈川県立産業技術総合研究所
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オプトジェネティクス(光遺伝学)は、光で活性化するタンパク質にて神経細胞を制御する技術で、神経科学の発展に大きく貢献している。光応答性タンパク質の活性化には、一般的に波長500 nm以下の青色光を用いるが、青色光は皮膚や生体内物質によって強く散乱・吸収されるため、青色光を生体内に届けるには光ファイバーの挿入を要し、生体組織の損傷や機能障害の懸念がある。
九州大学などは、生体透過性が高い赤色・近赤外光を生体内で青色光に変換可能なフォトン・アップコンバージョン(以下、UC)ナノ粒子を開発し、生体内で神経細胞の光操作に成功した。
今回、新規有機増感剤分子の開発により、赤色・近赤外光から青色光への変換効率が2倍以上更新された。また、従来のUC材料には生体毒性の懸念がある重金属を含むが、今回開発のUC材料は有機分子のみで構成される。マウス皮下に有機UCナノ粒子を投与、体外から赤色光を照射して生体内で青色光応答性のオプトジェネティクス操作に成功した。この成果により、生体内の神経活動を低侵襲的に光操作でき、オプトジェネティクスによる生命・医療分野への展開が期待される。