OplusE 2013年8月号(第405号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
光ファイバー通信の新たなブレークスルーへ向けて
- ■テラビットからペタビットへ向かう光通信技術
- 日本大学 工学部 柴田 宣
- ■ペタビット級光伝送システム技術の展望
- 日本電信電話 NTT未来ねっと研究所 佐野 明秀
- ■光多値化技術とさらなる周波数利用効率向上に向けて
- 東北大学 中沢 正隆,廣岡 俊彦,吉田 真人,葛西 恵介
- ■デジタルコヒーレント通信と非線形光学効果対策技術
- 富士通*,富士通研究所**,富士通研究開発中心***,星田 剛司*,中島 久雄**,陶 振寧***
- ■光ファイバー通信用誤り訂正技術の最前線
- 三菱電機 水落 隆司
- ■超高速化・多値化へ向けた光変復調デバイスの展望
- 日本電信電話 フォトニクス研究所 才田 隆志
- ■デジタルコヒーレント通信用の狭線幅波長可変光源
- 古河電気工業 向原 智一,粕川 秋彦
- ■フューモード光ファイバー技術
- 大阪府立大学 大橋 正治
- ■マルチコアファイバーとその融着接続技術
- フジクラ 松尾 昌一郎
- ■光ファイバーヒューズ,問題とその対策技術
- 日本電信電話 アクセスサービスシステム研究所 黒河 賢二
特別企画 画像センシング展2013 特別招待講演レビュー
- ■誰にでもわかる「特別招待講演」● FA
生活・社会・産業の各分野で進む実用化,プロジェクターの高速化などで発展する3D 画像センシング技術 - オムロン 諏訪 正樹
- ■誰にでもわかる「特別招待講演」●三次元計測
ロボットが目で見たものを掴むまで,3次元ビジョンセンサー,認識アルゴリズム,認識と動作のキャリブレーションを組み合わせる - 三菱電機 堂前 幸康
連載
- ■【一枚の写真】ネオジム磁石に添加したレアアース金属の原子カラム元素マッピング
- 九州大学 板倉 賢,松村 晶
- ■【私の発言】常に新しいことにチャレンジするのが研究の醍醐味
- 東京農工大学 名誉教授 黒川隆志
- ■【第10・光の鉛筆】20 不遊点(aplanatic point)
- 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】97 99.ミー散乱
- 東芝 本宮 佳典
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第6章 光は曲がる(その1)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■4k映像システム開発の歴史と展望~連載開始に際して
- 小野 定康
- ■【4k映像システム開発の歴史と展望】1章 映像メディアの統合と人の視覚能力
- 小野 定康
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【研究所シリーズ】国立天文台 星・惑星の誕生領域の赤外線の偏りの普遍性と生命のホモキラリティー
- 權 靜美
- ■【ホビーハウス】ステレオ写真の本(98) クロマデプス3Dメガネ,レンチキュラーレンズシートなど
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
テラビットからペタビットへ向かう光通信技術日本大学 工学部 柴田 宣
今世紀初頭あたりには頻繁に話題として登場した,「家庭までの光ファイバー化」を意味するFTTH(fiber-to-the-home)。この言葉が鳴りを潜めて久しいが,これは,光ファイバーが身近な存在として,浸透した証しといえよう。新たなネットワークサービスやアプリケーションの登場は,ネットワークトラフィックの際限ない増加を招く。ワイヤレス通信におけるスマートフォンの急速な普及や映像配信に見られるコンテンツの大容量化などが例として挙げられる。FTTHに代表されるアクセス系ネットワークからのトラフィック増を経済的にハンドリングするためには,バックボーンとなる幹線系光伝送システムのさらなる超高速化・大容量化が必須であるとの認識がある。その場合,議論の対象は「光ファイバー一芯当たりの情報伝送容量」である。これまで,伝送容量拡大の手段として威力を発揮してきたのは,時分割多重(TDM:time-division multiplexing)による超高速化技術と波長多重(WDM:wavelength-division multiplexing)による大容量化技術である。これらが伝送容量拡大の解決手段として,セットで主役を務めてきた。一方,光ケーブルに収容されるファイバー芯線数で表現される空間多重(SDM:space-division multiplexing)は,「光ファイバー一芯当たりの情報伝送容量」を議論する上で,これまで俎上に載せられることはなかった。しかし,マルチコア構造を有する光ファイバーの登場により,ここにきてSDMが一気に注目されるようになった。さらに,複数の導波モードのみが伝搬可能なフューモードファイバー(FMF:few mode fiber)によるモード分割多重(MDM:mode-division multiplexing)が新たな多重化手段として注目されるようになった。図1は1980年から今日に至るまでの伝送容量の推移を,実験室レベルの光伝送実験(右上がりの実線の矢印)と商用光通信システム(右上がりの点線の矢印)を対象に整理したものである。また,光通信システム実用化のエポックとなるシステム技術および光部品・デバイス技術を同図に示した。実験室レベルの光伝送実験について眺めると,大容量化の手段として電気多重を基本とするETDM技術が先行し,10Gbit/sの伝送速度を境に,WDM技術との併用がスタートした。その後,伝送速度は40Gbit/s→100Gbit/sとさらなる超高速化の道を歩み,同時に波長多重数の増大による相乗効果が威力を発揮し,10Tbit/s級光伝送実験成功へと進展した。ところが,2値のデジタル光伝送を用いた方式では,入力光電力と伝送容量の関係において,1Tbit/sの光信号伝送に必要な平均入力光電力が1W程度となることが指摘され,同時に,ファイバーコアが溶融する「ファイバーヒューズ」の問題が浮上した。これにより,入力光電力レベルが大容量の情報を長距離伝送するキーとなることが明らかとなり,ファイバーヒューズを回避するシステム技術として,長スパン化に威力を発揮した誤り訂正符号(FEC:forward error correction)技術や1つの光パルスで数ビットの伝送を可能とする多値変復調技術が盛んに研究されるようになった。また,入力光電力の増大は,四光波混合などの非線形光学効果による信号劣化を招くため,光通信システムの新たなブレークスルーを実現する上で,非線形光学効果対策が重要な課題となった。さらには,デジタル信号処理(DSP:digital signal processing)技術を基本とするデジタルコヒーレント通信技術が注目されるようになった。また,最近特に注目すべき新たなブレークスルーとして,図中★印で示したマルチコアファイバーによる1Pbit/s光伝送実験の成功が挙げられる。光通信システム実用化の観点から,マルチコアファイバーの接続技術がキーであることは言を俟たない。
光ファイバー通信の新たなブレークスルーへ向けた取り組みを俯瞰すると,以上の通りである。光ファイバー通信の最新動向も含め,理解の一助となれば幸いである。
広告索引
- (株)インデコ405-003
- (株)インフラレッド405-010
- エドモンド・オプティクス・ジャパン(株)405-997(表3対向)
- オーシャンフォトニクス(株)405-999(表4)
- オーテックス(株)405-014
- (株)オプトサイエンス405-015
- (株)オプトハブ405-008
- (株)清原光学405-016
- (株)コーンズテクノロジー405-011
- (株)コーンズテクノロジー405-012
- (株)コーンズテクノロジー405-013
- コヒレント・ジャパン(株)405-002(表2)
- (株)システムズエンジニアリング405-999
- (株)ティー・イー・エム405-017
- (株)東京インスツルメンツ405-007