セミナーレポート
次世代液晶プロジェクタ組立調整ロボットの開発~人感性に迫る画質・光学調整技能の自動化~NECグリーンプラットフォーム研究所 野崎 岳夫
本記事は、国際画像機器展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
■人による官能調整からロボットによる自動調整へ
当社は長年にわたって液晶プロジェクタのロボット開発を行ってきました。ロボットは,今回協力をいただいたNECディスプレイソリューションズ(株)に納入されており,中国の蘇州でプロジェクタの生産が行われています。商品ラインナップには,液晶プロジェクタをはじめ,DLPプロジェクタ,デジタルシネマのプロジェクタがあります。その中で「インスタレーション」「セミ・インスタレーション」「単焦点」に属する液晶パネル搭載機種が本研究のロボットでつくられているものです。NECのプロジェクタは,2000年前後から量産が始まり,2004年からはほとんどが中国生産に切り替わっています。以降,生産は人件費の安い中国に移すとともに,開発は日本に残すという形で,中国と日本の分担で進められてきました。
製造現場で,なぜ画質調整のロボットを導入せざるを得なかったのか。それは,これまで人の感性などに依存した調整になっていたこと,さらに個人によってバラつきがあり,作業習熟に時間がかかる上,しかも,LCDが高精細化することで,人の目で見ながらの調整が困難になったということが挙げられます。さらに,近年の中国の流動的就労環境下では人員確保,安定生産が難しくなってきたという事情がありました。こうした課題を背景に,従来の目視・手動による官能調整・接合から,次世代の液晶プロジェクタ接合組立ロボットへ。スキルレス化と高精度な自動調整技術の確立を目標に開発が進められました。
中国では2001年から液晶プロジェクタの生産が開始されていましたが,手動接合機による接合と限られた操作の自動化だけでした。そこで2008年に研究所でロボットの試作機を開発。量産機へと改良を進めてきました。ちなみに2010年頃は,まだ限定した製品のパネルの調整しかできませんでしたが,現在ではほとんどのパネルが調整できるようになっています。
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NECグリーンプラットフォーム研究所 野崎 岳夫
※所属は発表当時。現在は情報・メディアプロセッシング研究所に所属。
1987年,日本電気株式会社入社。同社,生産技術研究所においてレーザー,画像認識を応用した組立・検査装置の研究開発に従事。1991年~1992年 米国スタンフォード大学ロボット研究所客員研究員。中央研究所異動後は,主としてカラー表示デバイス,プロジェクタ製品向け画像処理および,画質調整ロボットの研究開発に従事。日本ロボット学会正会員。