フォトン・アップコンバージョン効率の最大化を可能にした固体材料の開発に成功九州大学,ミラノ・ビコッカ大学
これまで,太陽光のような弱い光を用いたアップコンバージョンの高効率化は困難を極めていたところ,今回,金属錯体骨格(MOF)のナノ結晶を合成し,そのナノ結晶表面をドナー分子で修飾するというコロイド・界面化学的な新しいアプローチを導入して,ドナーからアクセプターに励起三重項エネルギーを効率よく移動できるようにし,また,MOFの構造中にアクセプター部位(ジフェニルアントラセン)を規則的に配列させることで,励起三重項エネルギーを高速に拡散させることに成功した。これら2つを解決したことで,太陽光程度の弱い光でもアップコンバージョンの効率を約2%最大化することに成功した。
今回開発した材料は,PMMAなど汎用性のプラスチックに組み込むことも可能であるため,折り曲げたり伸ばしたりできるフレキシブルなデバイスの基盤材料としても期待される。将来的に近赤外光を可視光に,また可視光を紫外光に変換する色素系へと応用すれば,太陽電池や人工光合成の効率を高めるための画期的な方法論になることも期待されている。