SACLA マルチビームライン運転に成功理化学研究所 研究グループ
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理化学研究所の研究グループは,X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAにおいて,2本のビームラインで同時にX線レーザーを発振させることに成功したと発表した。これまで,線型加速器で電子ビームを加速するXFEL施設では,1本のビームラインで1つの利用実験しか行えず,急増する利用の要望に対して利用機会の拡大が大きな課題であった。そこで,SACLAでは,線型加速器終端で電子ビームをパルスごとに複数のビームラインへ振り分け,複数のビームラインで同時にレーザーを発振させるマルチビームライン運転に挑んだ。また,ビームライン間のレーザー波長を広い範囲で独立に調整するには,ビームラインごとに電子ビームエネルギーを変える必要があるため,SACLAでは,線型加速器で加速する電子ビームをパルスごとに制御し,各ビームラインで行う利用実験のレーザー波長に最適なエネルギーまで加速する手法を開発した。それにより,今回,30Hzの電子ビームパルスを2本のビームライン(BL2とBL3)に交互に送ることにより,同時に2本のビーム
ラインで安定なレーザー発振を達成し,ビームライン間のレーザー波長も4~10keVの広い範囲で変えることが可能であることを実証した。ただし,現行のマルチビームライン運転では,BL2への電子ビーム輸送路におけるコヒーレント放射の影響を抑制するため,電子ビームパルスのピーク電流を低減する必要がある。そのため,レーザー出力が制限されている。今後,強いレーザー出力を要する実験がマルチビームライン運転下で実施できるよう,電子ビーム輸送路におけるビーム光学系の改善によって,レーザー出力の向上を図ることが期待されている。また,SACLAでは,2つの利用実験を並行して行うことができるようになり,利用機会の大幅な増加が期待できる。