OplusE 2016年5月号(第438号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
光を操作する,光で操作する材料~有機材料を中心として
- ■特集にあたって
- O plus E 編集部
- ■フェムト秒レーザーによる分子整列制御を利用した同位体選択イオン化
- 量子科学技術研究開発機構 赤木 浩
- ■赤外プラズモニック増強場を用いた金属表面における電子放出の直接的操作
- 東京大学生産技術研究所*,東京農工大学大学院** 芦原 聡*,草 史野**
- ■表面レリーフ格子形成とその応用
- 東京大学 梅垣 真祐,志村 努
- ■超高速光変調の実現に向けたEOポリマーの高機能化
- 情報通信研究機構 大友 明
- ■フォトリフラクティブポリマー
- 九州先端科学技術研究所(ISIT)*,理化学研究所** 藤原 隆*,佐々 高史**
- ■有機-無機材料ハイブリッド化と光デバイス応用
- 宇都宮大学 杉原 興浩
連載
- ■【一枚の写真】カーボンナノチューブの新しい光機能「アップコンバージョン発光」の発見
- 京都大学エネルギー理工学研究所 宮内 雄平
- ■【私の発言】決められたことではなく自分の思いどおりにやり手品の種を探してほしい
- 東北大学名誉教授 清野 慧
- ■【第11・光の鉛筆】6 Youngの色彩理論2 新規性と独創性
- 鶴田 匡夫
- ■【干渉計を辿る】第1章 白色干渉計を用いたレンズ厚測定
1.4 白色干渉計に対する分散の影響~群速度と群屈折率について - 市原 裕
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第39章 光のキャッチャー:受光デバイス(その1)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■コンピュータイメージフロンティア
- Dr.SPIDER
- ■【ホビーハウス】“ペッパーズ・ゴースト”は手作りのホログラム?
- 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
表紙写真説明
EO(Electro-Optic:電気光学)ポリマーは2次非線形光学効果の一種である1次の電気光学効果(ポッケルス効果)を示す有機高分子であり,EO効果を用いた光変調器は,光通信において電気信号から光信号への変換をつかさどり通信速度を決定づけるキーデバイスである。写真はEOポリマー/シリコンハイブリッド光変調器の伝搬光モード分布である。(関連記事「超高速光変調の実現に向けたEOポリマーの高機能化」情報通信研究機構 大友 明:詳細は443ページ)
特集にあたってO plus E 編集部
光を操作する,光で操作する材料~有機材料を中心として
「光で操作する,光を操作する材料~有機材料を中心として」をテーマに選び,特集を組んだ。有機材料は分子種だけではなく,アモルファス・結晶などの構造も多様であることから,新しい光機能性材料の開発が進められてきた。1982年のACS(American Chemical Society),1985年のMRS(Materials Research Society)のシンポジウムでテーマとして取り上げられ,有名になったのは有機非線形光学材料であるが,非線形光学効果以外にも様々な光機能性を利用,あるいは付与する試みが行われてきた。これらは「光を操作する」材料の開発と言えるが,最近は多岐に亘る材料を「光で操作する」研究が盛んに行われるようになってきている。
本号では,有機光材料を中心として,「光で操作する」材料と「光を操作する」材料に大別して特集を組んだ。それぞれの分野を先導しておられる方々にお願いして,以下のタイトルで全6編のご寄稿をいただいた。
(1)赤木 浩(量子科学技術研究開発機構):フェムト秒レーザーによる分子整列制御を利用した同位体選択イオン化
(2)芦原 聡,草 史野(東京大学生産技術研究所,東京農工大学):赤外プラズモニック増強場を用いた電子放出の直接的操作
(3)梅垣真祐,志村 努(東京大学生産技術研究所):表面レリーフ格子の形成とその応用
(4)大友 明(情報通信研究機構):超高速光変調の実現に向けたEOポリマーの高機能化
(5)藤原 隆(九州先端科学研究所),佐々高史(理化学研究所):フォトリフラクティブポリマー
(6)杉原興浩(宇都宮大学):有機~無機材料ハイブリッド化と光デバイス応用
から構成される。
(1)~(3)は多岐に亘る材料を「光で操作する」話題,(4)~(6)は「光を操作する」材料の話題である。
(1)の対象材料は,福島原発事故以来盛んになった,大量の使用済み核燃料に関わる話題である。軽い分子のレーザー同位体分離(分子レーザー同位体分離法,分子レーザー法)や化学反応の制御と異なり,対象は重い元素である。高レベル放射性廃棄物の同位体分離が可能になれば,個別処理・貯蔵することで,廃棄物の大幅な減量化,その貯蔵費用の低減化を可能にするという。いずれ化石資源の枯渇に直面する人類にとって重要な課題である。
(2)の対象材料は金属である。話題は量子力学の根幹に関わる問題でもあり,読者にとっては難解かもしれない。電流がマイクロ波周波数の電場によって制御されている半導体デバイスに対し,ミクロなスケール,原子レベルのスケールの電流が光周波数の電場によって制御されるため,超高速エレクトロニクス素子開発につながるという。これもまた未来指向の話である。
(3)の対象材料は有機材料である。光電場によってアゾベンゼン分子,それに伴い主鎖ポリマーの位置が動き,有機薄膜表面上に干渉縞に応じたレリーフ格子が作れる,緩和しない格子が作製されるという話題である。大容量アーカイブ・メモリーへの期待が述べられている。
(4),(5)は先に述べたMRS以来研究が活発になった話題である。(4)は電場配向ポリマーを電気光学(EO)ポリマーとして利用する,実用性の高い話である。高速変調導波路デバイスの原理,種類,作製法が詳細に説明されており,教育的でもある。著者らが開発し,市販され始めたポリマーについても触れられている。また,光通信のみならず,様々な分野,場面で使用される可能性を期待して稿が閉じられている。(5)のフォトリフラクティブ効果とは光誘起屈折率変化のことである。無機強誘電性結晶で1966年に発見された。有機結晶での報告後すぐにポリマーでも報告された。ポリマーは種々に加工可能であるだけでなく,様々な設計が可能であり,ダイナミックホログラム用材料として期待されている。応用分野も拡がるのである。時間応答,屈折率変化量の増大などに関して,研究の現状が報告されている。
最後の話題(6)は最新の成果である。有機,無機材料を一体化することによって,真空プロセスを必要としない薄膜を作製できるだけでなく,有機材料だけでは得られない範囲の屈折率が得られるため,低層数の多層膜ミラーが作製可能となり,導波路デバイスを始めとして様々なデバイスへの応用が述べられている。
以上,読者にとって新鮮な話題を提供した号となっていると確信する。
広告索引
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