OplusE 2017年5月号(第450号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
逆問題手法による計測技術
- ■特集にあたって
- O plus E編集部
- ■楽しい逆問題
- 東京大学 河原 創
- ■彗星ダストテイル逆問題のレビュー
- 姫路科学館*,神奈川工科大学厚木市子ども科学館** 秋澤 宏樹*,菅原 賢**
- ■リソグラフィにおける逆問題手法を使用した光計測
- キヤノン 稲 秀樹
- ■光計測の逆問題と光学設計:類似と相違
- 宇都宮大学 武田 光夫
特別企画
- ■国際画像機器展2016 特別招待講演
- デンソー 加藤 直也
連載
- ■【一枚の写真】ホログラフィックレーザー描画で描き出される泡の立体像
- 宇都宮大学オプティクス教育研究センター 熊谷 幸汰
- ■【私の発言】オープンイノベーションでお客さまとギブ・アンド・テークする
- チームオプト 宮前 博
- ■【第11・光の鉛筆】17 Heringの反対色理論
- 鶴田 匡夫
- ■【干渉計を辿る】第3章 面形状測定用干渉計 3.4 フーリエ変換縞解析法
- 市原 裕
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第51章 忘れないで:光ディスクメモリー(その2)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■コンピュータイメージフロンティア
- Dr.SPIDER
- ■【ホビーハウス】切り替え式の光学系の仕掛け
- 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
表紙写真説明
逆問題の一つの解法に,自然一般化逆行列(natural generalized inverse matrix; NGIM)があるが,逆問題の不安定性が起きると振幅の大きい高周波の不安定成分が現れる。不安定性を抑えるための処方をRegularization(正則化)と呼び,有用なものにTikhonov regularizationがある。写真は,入力データ(左)とデータにノイズがある場合のNGIM(中央)とTikhonov regularization(右)によるChe mappingの結果である。(関連記事「楽しい逆問題」東京大学 河原 創:詳細は455ページ)
特集にあたってO plus E編集部
逆問題手法による計測技術
「逆問題」を英語ではInverse Problemであり,その「逆」は,順問題(英語では Direct problem)である。逆とか順を問題に付けて呼ばれていることをご存じない方がいらっしゃるのでは,と推測する。そこで,「逆問題」を計測に応用している内容を本誌2017年5月号にて特集とし,「逆問題」の考え方を少しでも紹介できたらとして提案した。
順問題では入力から出力を求めるものであるが,「逆問題」では,関数に対する「逆関数」のように出力から入力を推定,あるいは入出力の関係性を考えるものである。
順問題では,入手が必要な情報(出力)を得るために,実験やシミュレーションを実施することである。この実施条件が,入力と考える。
一方,「逆問題」は順問題とは「逆」になり,実験やシミュレーションの結果を入力として,その条件を出力として求めることである。
さて,今回の特集の記事として,以下の方々に四件の執筆をお願いした。
東京大学: 河原 創 氏
姫路科学館: 秋山 宏樹 氏
神奈川工科大学: 菅原 賢 氏
キヤノン: 稲 秀樹 氏
宇都宮大学: 武田 光夫 氏
「逆問題」の優れている点は各記事の中に記載していただいているので,ここではあえて問題と考えられることを挙げて,「逆問題」の考え方を使用する時の注意勧告とする。
順問題を検討する場合に実施する実験やシミュレーションの内容は,物理現象や定理に従ったものであるが,「逆問題」の場合には,逆の物理現象や定理が存在しない場合を対象としている。
そのため,「逆問題」を解くためには事前に多くの情報を必要とする。(「逆問題」という言葉より知られているであろう)機械学習は,「逆問題」の考えを使用している。この機械学習の基本的な考えは, 逆問題の種類に応じて確率モデルを仮定し,データからその確率モデルのパラメータを最適化することによって逆問題を解くことであり,「教師あり」や「教師なし」という言葉が使われているが,機械とはコンピューターのことであり,「教師あり」が,事前に入手する多くの情報に当たる。
一例として,医師による患者の病名の診断を考えるとする。この行為は,「逆問題」を行っていると考えられ,その事前に入手している多くの情報は,医学書や自分の経験によるものである。
過去に存在した情報を使うため,新規に発生した事例を正しく想定することを保証することはできない。突然変異等で発生した新しいウイルスへの正しい対応には月日が掛かることは,ご理解いただけるであろう。
また「逆問題」の答えは,それが最適であるか,一つの答えだけでは判断できない。なぜ,と考えた時に,その答えがいくつか考えられても,どれが正解か,その場では判断できない,と言うことである。
そのため,「逆問題」の考えを計測に応用する場合には,例えばエリプソメトリーで用いられているGOF(Goodness Of Fit)の様な,計測結果をどれだけ自信を持って推定しているかの評価基準を定量的に示すことが有効である。
この様に「逆問題」の計測では問題点が存在するが,それでもこの考え方を計測に使うのは,他に入手が必要な情報を得る手段が無いからである。
昨今の半導体技術の進歩の恩恵(性能,費用,納期,すべてにおいて)により「逆問題」的な解法は,特別な立場の人(昔のスパコン使用者など)ではなくても可能となっている。
「逆問題」は,複数の基礎の技術の上に成り立っている。そのため「逆問題」を説明していただくためには対応する基礎となる技術,特に数学的な内容,の理解が必要となる。
各記事とも,基礎となる技術を紹介してくださっているが,初学者向けに説明していただくことが不十分であるのでは,と感じた。
こうなってしまった一要因としては, 紙面の都合で,各記事に最大枚数の制限をお願いしたことが考えられる。
本誌,O plus Eは学会の会誌とは異なる立ち位置を目指しているので,今後の紙面を編集する上で,十分考慮した対応に心掛けることをお約束して,お許しいただきたい。
また第4次産業革命を目指すインダストリー4.0で実現する事として,現状でのウィキペディアの記載によれば,
●モノのインターネット化(IoT)により,設備が人と協調して動く,サイバーフィジカルシステム(Cyberphysical system)が実現
●ビッグデータ(Big data)やクラウドコンピューティング(Cloud computing)を活用した,徹底した品質追跡管理および工程改善
とある。
この環境で取得したビッグデータに対してデータマイニングを行うことで,これまで着目していなかった関係を見つけ出すことができ,新たな内容の情報を入手することが「逆問題」手法を使うことで可能となる。
広告索引
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