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自分で流れを作り出すことに取り組む勇気を持ってほしい東京大学 荒川 泰彦

日本学士院賞は,量子ドットの研究分野全体に対する評価

聞き手:この度は日本学士院賞の受賞,誠におめでとうございます。早速ですが今回受賞されました日本学士院賞につきましてお教えください。

荒川:ありがとうございます。日本学士院は,「学術上功績顕著な科学者を優遇するための機関として,学術に寄与するために必要な事業を行う」ことを目的として,明治12年に福沢諭吉を初代会長として文部科学省に設置されました。当初は,東京学士会院という名称でしたが1947年に日本学士院となりました。日本学士院賞は明治44年に始まり,今回,平成29年度は第107回となります。日本学士院賞は,日本の学術への貢献に対する賞としては,最も権威ある賞の一つとして広く認識されていると思います。
 昭和24年度以降の授賞式には天皇陛下の行幸があり,平成2年からは天皇皇后両陛下の行幸啓を仰いで挙行されています。

聞き手:受賞された感想をお聞かせいただけますでしょうか。

荒川:学術の研究を行ってきた者として,あるいは大学の一研究者として,日本学士院賞を受賞したことは,大変光栄なことでした。また,量子ドットの研究が高く評価されて,こういう賞を与えていただいたのは,私個人のみならずこの分野全体にとっても大変喜ばしいことです。
 今回の受賞に至ったのは,半導体での量子ドットという概念の創出,それからレーザーへの応用が主な理由になります。量子ドットレーザーにおいては,電子の運動の自由度低減が半導体レーザーの諸特性の向上に大変有効ですが,その物理を明らかにするとともに,それを実証し,さらにQDレーザ社による量子ドットレーザーの実用化に向けて,学術の立場から貢献したことが評価されたのだと思います。
 また,量子ドットレーザーに加えて,固体中における共振器量子電気力学の効果を実験的に明らかにしたことも認められました。さらに,単一光子発生素子や,まだあくまで理論としての話ですが,量子ドット太陽電池の有用性などを明らかにしたことも,評価されてのことだと考えています。
 提案以来35年間,一貫して量子ドット科学技術の研究に取り組んできたことを,日本学士院に評価いただいたことは,私にとりまして大変名誉なことでした。

日本学士院賞の授賞式には天皇皇后両陛下の行幸啓を仰いで挙行された



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荒川 泰彦

荒川 泰彦(あらかわ・やすひこ)

1975年 東京大学工学部電子工学科卒業 1980年 東京大学工学系研究科電気工学専門課程修了 工学博士 1980年 東京大学生産技術研究所講師 1981年 東京大学生産技術研究所助教授 1984年から1986年 カリフォルニア工科大学客員研究員 1993年 東京大学生産技術研究所教授 1999年 東京大学先端科学技術研究センター教授(2008年まで) 2006年 東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長 2008年 21・22期日本学術会議会員 2012年 東京大学生産技術研究所・光電子融合研究センター長
●主な受賞
1991年 電子情報通信学会業績賞 1993年 服部報公賞 2002年 Quantum Devices賞 2004年 江崎玲於奈賞 2004年 IEEE/LEOS William Streifer賞 2007年 藤原賞 2007年 産学官連携功労者 内閣総理大臣賞 2009年 IEEE David Sarnoff賞 2009年 紫綬褒章 2010年 C&C賞 2011年 Heinrich Welker賞 2011年 Nick Holonyak,Jr.賞 2012年 応用物理学会化合物半導体エレクトロニクス業績賞(赤崎勇賞) 2014年 応用物理学会業績賞 2017年 日本学士院賞

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