セミナーレポート
画像センシングからみたAI 技術への期待オムロン(株) 技術・知財本部 技術専門職 諏訪 正樹
本記事は、国際画像機器展2017にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
センサー・センシングとモデル化
最初に,センサーとセンシングの位置づけを定義しておきます。センサーは,検出対象に対して何らかの物理的,化学的手段で,最終的に電気信号にする素子です。センシングは,センサーを使って意味のある情報に変換する,すなわち物理情報~電気信号~デジタル情報の一連の変換プロセスとして位置づけます。この一連の変換プロセスでは2つのステップが必要になります。まず,意味のある情報に対する定義をどうするのかということ。それから,その定義ができた時点で,それをどのようにして意味に変換するかというルール形成です。対象の定義ができれば,意味のある情報に変換することは容易です。ところが,画像センシングの対象となるものは,対象の定義(モデル化)すらできないことが多いのが実情です。センサー,センシングのモデル化は3つのタイプに分けることができます。1つは,White-Box型モデル化で,第一原理に基づくモデルです。これは微分方程式などで記述できるため,再現性もよく,挙動解析もできます。ちなみにセンサーはこれでモデル化されています。その対極にあるのが,2つめのBlack-Box型モデル化です。センシング対象の定義が困難な場合に適応されるもので,世間でもかなりお馴染みになってきたいわゆるAI技術,ディープラーニングの世界もこの範疇です。ニューラルネットワークの活用技術が発展してきたことで,大量のデータのハンドリングができれば,対象の定義ができなくてもセンシングとして多様な原理に活用できます。この両者の間にあるのが,3つめのGray-Box型モデル化です。例えば,画像認識の世界では数年前までかなり主流であったのですが,特徴抽出までを人間が設計し,その後を機械が担当するといったものです。Gray-Boxなどの用語は,制御やシステム同定の世界で使われているものをセンシングの世界に借りてきました。
次に,センシングにおける意味抽出のルール形成では,2つのパターンに分かれます。大雑把にいうと演繹的に行うか,帰納的に行うかということです。演繹的に行うのは,典型的なWhite-Box型モデル化です。これができればいいのですが,実際には画像センシングのアルゴリズムは,帰納的に設計せざるを得ないという側面があり,Black-Box型モデル化やGray-Box型モデル化になります。機械学習は帰納的アプローチの典型例です。
<次ページへ続く>
オムロン(株) 技術・知財本部 技術専門職 諏訪 正樹
1997年 立命館大学理工学研究科博士後期課程修了。同年オムロン(株)入社。入社以来,画像・光センシングの研究開発に従事。博士(工学)。2010年より奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 客員教授兼任。2013年より九州工業大学 生命工学研究科 客員教授兼任。