光学顕微鏡で原子レベルの位置決定精度を達成自然科学研究機構分子科学研究所,生理学研究所 研究グループ
金ナノ粒子は,モータータンパク質などの生体分子が働く様子を,光学顕微鏡で1分子観察するための目印(プローブ)として用いられている。金ナノ粒子は光を強く散乱するため,マイクロ秒の時間分解能での高速1分子観察に用いられてきたが,粒子の位置をどこまで正確に決めることができるのか(位置決定精度),その原理的限界はこれまで明らかになっていなかった。
また,金ナノ粒子からの信号光強度を高める輪帯照明型の全反射暗視野顕微鏡を構築し,マイクロ秒オーダーの時間分解能と原子レベルの位置決定精度を両立した。さらに開発した装置を用いて,生体内の長距離物質輸送を担うモータータンパク質キネシンの挙動を観察し,キネシンの足の動きを10マイクロ秒の時間分解能で詳細に追跡することに成功した。今後,モータータンパク質が効率的に働く仕組みの解明など,生物学分野への様々な貢献が期待される。