OplusE 2019年3・4月号(第466号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
異なる種類の材料をレーザー光で接合する
- ■特集にあたって
- 慶應義塾大学 神成 文彦
- ■異種材料のレーザー溶接・接合技術
- 大阪大学 片山 聖二
- ■レーザーによる異材接合技術と異材接合体の強度信頼性評価
- 長岡技術科学大学 宮下 幸雄
- ■インサート材料を用いたレーザー接合
- 広島工業大学*,岡山県工業技術センター**,富山県立大学***,岡山理科大学†,日野 実*,水戸岡 豊**,永田 員也***,金谷 輝人†
- ■DLAMPによるレーザー接合技術の原理と実例
- ダイセルポリマー 板倉 雅彦
- ■レーザーによる金属と異種材料の直接接合技術「レザリッジ」
- ヤマセ電気 佐藤 昌之
- ■レーザー圧接法による異種金属接合
- 阿南工業高等専門学校 西本 浩司
- ■レーザーブレージングによるセラミックスと金属の異種材料接合
- 鹿児島県工業技術センター*,大阪大学**,永塚工業***,瀬知 啓久*,永塚 公彬**,***,塚本 雅裕**,中田 一博**
- ■kW級青色半導体レーザーが拓く純銅クラッディングの現在と未来
- 大阪大学*,日本原子力研究開発機構**,石川県工業試験場***,村谷機械製作所†,島津製作所†† 東野 律子*,塚本 雅裕*,升野 振一郎*,阿部 信行*,菖蒲 敬久**,佐藤 雄二**,舟田 義則***,左今 佑†,東條 公資††
特別企画
- ■ビジュアルメディアExpo2018 招待講演
- 東京大学 廣瀬 通孝
- ■国際画像機器展2018 招待講演【セキュリティ】
- NEC 高橋 巧一
- ■国際画像機器展2018 招待講演【AI・自動運転】
- 中部大学 藤吉 弘亘
連載
- ■【一枚の写真】炎の中のとがった物体でもつかめる数珠状の柔軟堅牢ロボットハンド
- 東北大学 多田隈 健二郎
- ■【私の発言】技術力とは,欲しいと言っている人がいたら,それを作ってあげること
- アストロデザイン株式会社 鈴木 茂昭
- ■【輿水先生の画像の話-魅力も宿題も-】第8回 万能型画像検査,KIZKIアルゴリズムと機械学習―画像検査,ヒトのやること機械にできること―KIZKI an Omni-potent Algorithm and Machine Learning in Image Inspection―What Human do and What Machine can do―
- YYCソリューション/中京大学 輿水 大和
- ■【光学ゼミナール】第8回 幾何光学の基礎
- 宇都宮大学 黒田 和男
- ■【波動光学の風景】第135回 137. 偏光子の透過率と消光比
- 東芝 本宮 佳典
- ■【干渉計を辿る】第11章 コヒーレンスとその制御
- 市原 裕
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】「光エレクトロニクスの玉手箱」を終えて:座談会
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■【霜田光一に聞く電波と光の最前線開拓】第Ⅳ章 レーザーの誕生とレーザー科学・技術の発展
- ヒアリンググループ
- ■【研究室探訪】vol. 8 慶應義塾大学 理工学部 神成研究室
- 慶應義塾大学 理工学部 神成研究室
- ■【国立天文台最前線 先端研究を支える人たち】第6回 月や小惑星から太陽系の起源を調べるRISE 月惑星探査検討室
- 荒舩 良孝
- ■【ホビーハウス】身近な物からの錯視-駅の通路からお皿まで
- 鏡 惟史
- ■【コンピュータイメージフロンティア】『バンブルビー』『ハンターキラー 潜航せよ』『キャプテン・マーベル』ほか
- Dr.SPIDER
- ■【ホログラフィ・アートは世界をめぐる】第8回 キエフ・モスクワ・サンクトペテルブルグ
- 石井 勢津子
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
表紙写真説明
写真は,青色半導体レーザーを用いた加工実験の様子を示している。高出力化・高輝度化技術の開発において,出力200 W,輝度2.6×106 W/㎠(直径100 μm)の青色半導体レーザーを達成した。実践的評価措置として青色半導体レーザーを搭載した3Dプリンターなどを製作し,その性能を実証してきた。(関連記事「kW級青色半導体レーザーが拓く純銅クラッディングの現在と未来」大阪大学 東野 律子ほか:詳細は244ページ)
特集にあたって慶應義塾大学理工学部 神成 文彦
異なる種類の材料をレーザー光で接合する
自動車をはじめとする輸送機器の軽量化は,CO2 排出量削減や省エネルギー化のために重要な課題となっている。さらに,自動運転技術開発が今後進み,絶対に衝突事故を回避できることになれば,車体構造の設計思想からの変革が可能となり,さらなる軽量化を進めることが可能になるはずである。しかし,現状におけるエンジンや変速機などの改良やハイブリッドシステムの採用は,むしろ車両重量の増加につながっている。また,現行の衝突安全基準の厳格化の結果,車両骨格部分の高強度化が不可欠となっており,これに伴い車両重量の増加を招くという,逆の方向に向かわざるを得ない状況にある。こうした状況に対し,車メーカーは軽量化のために,高張力鋼薄板をはじめ,軽量金属材料であるアルミニウム合金やマグネシウム合金の採用や,さらに軽量化が可能な樹脂材料,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の利用を検討している。すなわち,適材適所に材料を組み合わせ,全体として優れた特性を有する部材や構造をつくり出す「マルチマテリアル化」が積極的に進められてきた。一般的に,100 kgの車体軽量化で1 km/Lの燃費改善と15 kg/kmのCO2 排出量削減につながると試算されている。
このマルチマテリアル化を実現するには,材質の異なる材料同士を直接接合する技術が不可欠である。現在は,アークやレーザーを用いた溶接やロウ付け,摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding),超音波接合などの技術が中心となっている。この中でFSWは有望な技術として確立されつつある。この手法は,摩擦熱で母材を軟化させるとともに,工具の回転力で接合部周辺を塑性流動させて結合する方法で,高い継ぎ手強度と低い熱ひずみや残留応力などの点で最も有効な手法として注目されている。マツダ製のロードスターのアルミフード等のアルミと鋼材の点溶接に用いられているそうであり1),鉄鋼とチタンとの異種溶接は羽田沖海上滑走路支柱に適用されている2)。
最もニーズの高い異種金属同士の接合の可能性は,材料物性から予想することが可能で,Cu-Niのように完全に混ざり合った固溶体を形成できる異種接合に適した組み合わせや,Cu-Feのように逆にまったく混ざり合わないものは異種接合が可能となる。一方,Al-Fe, Al-Mgのような堅くてもろい金属化合物を形成してしまう材料の接合は困難になる。表1にレーザー溶接を対象にした異種接合の難易度を数値で示した3)。数字が大きくなるほど接合が困難になる。表からわかるように,すでに技術的に確立されている異種材料接合が存在する一方で,金属-金属の接合でも難しいものが多い。これらに加えて,金属と樹脂のような性質の異なる材料間の異種接合が今注目を集めている4)。
レーザーによる局所・短時間加熱の利点を利用して近年注目されているのが,金属とセラミックス,あるいは金属と樹脂・CFRPの接合である。もの作り先進国の日本においては,すでにメーカー独自にレーザーを利用した異種材料接合法が開発されている。接着層を利用したり,接合面に前処理的な表面改質を施したりする方法が開発されている。また,樹脂と金属を重ね,光透過性の樹脂側からレーザーを照射して金属表面を加熱して接合する手法や,逆に透過性のない樹脂に関しては金属側にレーザーを照射して熱伝導で接合面の樹脂を溶融して接合する技術も提案されている5)。
一方,本特集では異種材料接合につながるレーザーコーディング技術にも注目した。高機能金属材料の高品質コーティングを実現するレーザークラッディング(肉盛溶接)と呼ばれる技術である。内閣府の革新的設計生産技術開発プロジェクトで開発された最新の本技術は,高出力青色半導体レーザーを利用し,金属粉体を溶融して自在の形状の凝固層を形成できるいわゆる3Dプリンター的な技術である。本技術開発に伴い,先日,青色半導体レーザーを束ねてファイバー出力光源として開発された200 Wの青色レーザー5台を空間的にビーム重畳した出力1 kWの青色レーザーが開発されたというニュースがあった。
今後,車は単なる移動手段だけではなく,様々なデータにアクセスし,コミュニケーションをとりながら居住空間としても楽しむ個人用の動くステーション的な位置づけを増し,その機能が多様化していくはずである。そして,わが国の製造業は車などの車両メーカーと,その車に供給する様々なデバイス,情報処理技術,居住空間用のコンポーネントを開発する企業が中心になるのではなかろうか。本誌で取り上げるようなきめ細かい表面改質技術,異種材料接合技術を要所で押さえていく努力は,AIなら何でも可能になるような妄想に惑わされることなく,しっかりと技術として積み重ねていく必要があろう。
参考文献
1) 藤本雄一郎,漆山優太:「自動車のマルチマテリアル戦略~材料別戦略から異種接合,成形加工,表面処理技術まで」,NTS 出版(2017)
2) 村井康生,小橋泰三:“チタンの鋼板への直接ライニング技術”,溶接技術,61(6), pp.76-81(2013)
3) Welding handbook, Vol.2, 8th edi. AWS(1991)
4) 中田一博:“異種材料接合の現状と摩擦エネルギーを利用した最近の研究”,スマートプロセス学会誌,Vol.4,No.2,pp.64-72(2015)
5) 川人洋介,丹羽悠介,片山聖二:“ステンレス鋼とポリエチレンテレフタレートとのレーザ直接接合と信頼性評価”,溶接学会論文集,Vol.28,No.1,pp.16-21(2010) 表 1 レーザー溶接法における異種金属材料の溶接難易度3)
1:固溶体形成可能で優れている,2:複合体を形成できるので良好,3:十分なデータに欠ける,4:信頼性のあるデータが存在しない,5:金属間化合物となり脆くて利用不可
広告索引
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