環境に優しい手法でSiC半導体の性能倍増に成功京都大学 研究グループ
S(i シリコン)を中心とした半導体は,計算機のロジックやメモリだけでなく,電気自動車,電車のモーター制御,電源などに広く用いられているが,消費電力(電力損失)が大きな問題となっている。近年,低損失化を目指して,Siよりも性質の優れたSiCによるトランジスター開発が活発になり,実用化が始まった。
しかし,SiCトランジスタの心臓部となる酸化膜とSiCの境界部分(界面)に多くの欠陥が存在し,SiC本来の性能をまったく発揮できない状況が20年続いていた。また,従来はこの欠陥を低減するために猛毒ガス(一酸化窒素)を使う必要があった。同グループは,欠陥の主要因を突き止め,さらに窒素という大気中に存在する安全なガスを用いることによって,現在の世界標準に比べて2倍という最高の特性を達成した。今回の技術により,普及が進む電気自動車や産業機器などへの,低損失SiCデバイス適用が急速に拡大し,エネルギー問題にも大きく貢献することが期待される。