失敗する他者の行動からその意図を推定する人工知能技術を開発北陸先端科学技術大学院大学
近年,人工知能(AI)が私たちの社会生活を支える基盤技術となってきたが,依然として人間の指令なしにAIが自律的に働く場面は限定的である。自律的なAIを開発するのが困難である技術的な理由の1つは,人間には一見易しく感じられる「他者の意図を読みとること」が難しいからである。同グループは,失敗する他者の運動からその目的を推論する問題の原型として,観察した運動の軌道を手がかりにその軌道を生み出した観測できない制御システムの特性を推論する問題に取り組んだ。この問題に対して,物体の運動を記述する力学系理論に基づく意図推定方法(アルゴリズム)を提案し,さらに,単純なモデルの計算機シミュレーションでその有効性を実証した。提案した方法では力学系の保存量(不変量)を運動の記述子(特徴量)として用い,異なる制御システムの運動の同一性を定量化している。成功例を学習するこれまでのAI技術では意図推定できない場合でも,本提案手法では行動の意図を推定できることがわかった。この技術は,障害・困難に直面する人の“気持ちを察し”,自ら助ける人工知能の創成に繋がると期待される。