接着剤が引き剥がされるプロセスを電子顕微鏡でリアルタイム観察産業技術総合研究所,科学技術振興機構
現在,自動車を始めとする構造体の製造ではマルチマテリアル構造設計による軽量化と,それを実現するための異種材料同士の接着接合技術が検討されている。今後の普及に向けて,接着接合部の強度や耐久性の信頼性確保が重要である。今回,接着接合部の破壊メカニズム究明に向けて,高分解能透過型電子顕微鏡により,接着接合部の破壊現象に伴う極微小な変形現象をリアルタイムで観察することに成功した。
アルミニウム合金とエポキシ系接着剤の接着接合部の破壊過程においては,これまでの知見では,き裂が接着面上を進展することで接着剤が剥離すると考えられていた。しかし,今回の破壊過程を直接観察することで,破壊に至るまでに接着剤の極微小な変形が複雑に進行する現象が明らかになった。今後,本観察技術で解明される破壊メカニズムを基に,接着接合部の耐久性向上に向けた接着剤の高性能化や被着体表面処理の最適化が進むと期待される。