OplusE 2010年10月号(第371号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
これからどう展開する? 立体映像
- ■特集にあたって
- OplusE編集部
- ■立体映像の基本 ―将来技術と利活用分野の展開―
- 本田ひかり技研/千葉大学 名誉教授 本田 捷夫
- ■両眼立体視による 3D 映像表示に関わる視覚特性
- 電気通信大学 名誉教授 出澤 正徳
- ■超臨場感コミュニケーションとその展望
- 情報通信研究機構 榎並 和雅
- ■家庭向け 3D コンテンツの規格化動向
- 情報通信研究機構 川上 一郎
- ■3D映像コンテンツ
- デジタルコンテンツ協会 田中 勉
- ■3Dディスプレイの生体影響と標準化
- ISO/TC 159国内対策委員会 久武 雄三,上原 伸一
- ■3Dプラズマテレビ「3D VIERA」
- パナソニック
- ■3D液晶テレビ「3D BRAVIA」
- ソニー
- ■2眼式立体映像の撮影・制作技術と“3D ひずみ”
- ヨコシネディーアイエー 村山 捷昭
- ■心臓外科手術 3D ハイビジョンライブ実証実験 ―大和成和病院と神戸国際展示場間を WINDS 衛星を使って―
- FA システムエンジニアリング 中村 康則,NHK メディアテクノロジー 寺田 茂,アスナ 河野 通之,情報通信研究機構 木村 和宏,高橋 卓
特別企画
- ■立体映像関連 ニュース ― 最新のトピックスを紹介 ―
- OplusE編集部
- ■追悼 島 和也 氏のご逝去を悼んで ― ステレオ写真の分野でのご活躍 ―
- 三次元映像のフォーラム 幹事/設立発起人 桑山 哲郎
- ■画像センシング展2010 ― 招待講演 ― 誰にでもわかる「安全・安心のための画像センシング」
- 三菱電機 鷲見 和彦
連載
- ■【一枚の写真】光で金属~半導体転移をする金属酸化物を発見!
― 金属酸化物で初めて室温光相転移を実現,夢の次世代光記録材料へ ― - 東京大学 大越 慎一
- ■【私の発言】弱小メーカーのとるべき戦略を考え抜く幸運に恵まれました(後編)
- モレキュラー・インプリンツ・インク 溝上 裕夫
- ■【第9・光の鉛筆】27 測距儀2 Zeiss社のステレオ測距儀
- ニコン 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】第63回 65. キルヒホッフの積分定理
- 東芝 本宮 佳典
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【入試問題に学ぶ光のあれこれ】第19回 レーザースペクトル線幅
- 日本大学 柴田 宣
コラム
- ■【ホビーハウス】ステレオ写真の本(87)― 最新MOOKから江戸時代の写真技法書まで
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
- ■【非凡なる凡人 私のなかの松下幸之助】松下方式撤退作戦
- 神尾 健三
■掲示板
■O plus E News
■New Products
■オフサイド
■次号予告
特集にあたってOplusE編集部
本誌で立体映像の特集を組んだのは2008年7月号であった。その当時(といってもわずか2年3カ月前であるが)とは随分状況が変わった。その理由としては,①液晶,プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP と略)に代表される大画面フラット・パネル・ディスプレイ(FPDと略)製品化の次の研究開発ターゲットとして,奥行きを感じさせるディスプレイが検討されており,その一つとして立体映像を考えていること,②3次元コンピューター・グラフィックス(3D-CG と略)の急激な発展により,立体画像が作りやすくなったこと,③従来の映画フィルムを使わないデジタル・シネマに付随して,ハリウッドを中心に展開されつつある立体映画が多く封切りされつつあること,④大容量光ディスクであるBlu-ray ディスクに適しているコンテンツの一つとして,3D映画のパッケージ・メディアがこれから販売されることが予想されること,⑤それに伴い,今年(2010 年)の4 月末にパナソニック,6 月初めにソニー,7 月末にシャープから3D テレビが新発売され,この秋には東芝,三菱電機からも発売される予定である。そういう背景もあり,最近の状況をあらためて特集することにした。
立体映画『アバター』が大ヒットしたことが一つのトリガーになり,次々に立体映画が制作・上映され,そのトレンドは現在も続いており,2009 年は「立体デジタルシネマ元年」と言われている。2010 年には30 作以上の3D 映画が制作されるとのことである。“立体映画”については,一時的なブームで終わった歴史があるが,今回も同じ一過的なブームで終わる危険性もある。
日本では完全地デジ化への移行が2011 年7 月に決まっており,その期限があと10 カ月程度に迫っていることもあり,大画面のフルHD 規格のFPD テレビが,ここ数年価格的にもこなれてきたこと,エコポイント対象製品になったこともあり急激に売れている。各テレビメーカーは,大画面テレビの次の新機能として,どうやって視聴者に奥行きを感じさせるかを調査・研究・開発した答えの一つの機能がいわゆる“3D テレビ”である。2010 年は「立体テレビ元年」と言われている。 「日経トレンディー」の最新号(2010 年10 月号)で,3D 映像機器特集部分があり,そのキャッチフレーズとして,“2D 映像機器はすべて3D 対応へ”とある。「近い将来,テレビをはじめ,ゲーム機,(ビデオ)カメラ,ネット配信も3D 映像対応になる」としている。日経トレンディーに掲載の図を示す(図1)。
またBlu-ray ROM の3D 規格が昨年末に規格化され,3D 映像が記録・再生できるBlu-ray プレーヤー(レコーダー)も新発売され始めている。このようにハードについてはそろいつつある。
しかし,ハードがそろっても表示するコンテンツがなければ,ただの(HD)テレビ(受像機)である。映画が封切られて半年経たずに光ディスク(DVD あるいはBlu-ray)のパッケージ・メディアが市販され,その後すぐにレンタルされる。当然,立体映画についてもそうなるだろうと予想していた(『アバター』も今年(2010年)4 月末にパッケージ・メディアが市販されたが,これは「立体」ではない)。また,立体テレビ放送もごく限られている。視聴できる3D 映像コンテンツがなければ,3D テレビは売れない。
現時点では視聴できるコンテンツがごくわずかなこともあり,3D テレビはあまり売れていない。2010 年の夏のボーナス商戦では,立体テレビはFPD テレビ全体のわずか1 %にとどまっているとの報告もある。
以上のような背景から,この特集では,立体映像を普及させるために重要なコンテンツ関連の記事に重点を置いた。しかし,この特集一冊で“3D 映像”全体の様子がおおよそ把握できるように,3D 映像の基礎的な部分について,また具体的な3D 映像の利用分野の例についても専門家に執筆をお願いした。
具体的には,
- 3D映像(表示)技術の基礎と展開について,また3D 映像がどのような分野で使われるかについて,「立体映像の基本― 将来技術と利活用分野の展開―」として,本田捷夫氏(本田ひかり技研/千葉大学名誉教授)に,
- 主に2眼ステレオ立体視の認識を中心に,「両眼立体視による3D 映像表示に関わる視覚特性」として,出澤正徳氏(電気通信大学名誉教授)に,
- 3D映像の最も大きい市場になると考えられる高臨場感(通信・放送)分野の展望について,「超臨場感コミュニケーションとその展望」を榎並和雅氏( 情報通信研究機構)に,
- 普及するために不可欠な3D 映像の規格の原状について,「家庭向け3D コンテンツの規格化動向」として,川上一郎氏(情報通信研究機構)に,
- ストレスなく視聴できる3D 映像制作を支援しているデジタルコンテンツ協会(DCAj)の活動を主に「3D映像コンテンツ」として,田中勉氏(Zデジタルコンテンツ協会)に,
- 立体映像表示に対するISO などの規格化の団体と活動の原状について「3D ディスプレイの生体影響と標準化」として,この活動の中心的立場である久武雄三氏,上原伸一氏(ISO/TC 159 国内対策委員会)に,
- 2眼ステレオ映像の撮影時に配慮すべき事項を中心に,「2 眼式立体映像の撮影・制作技術と“3D ひずみ”」について,長年ステレオ映像の撮影を手掛けてきた村山捷昭氏((株)ヨコシネディーアイエー)に,
- 立体映像の利活用の一つの試みとして行われた「心臓外科手術3D ハイビジョンライブ実証実験― 大和成和病院と神戸国際展示場間をWINDS 衛星を使って―」の実行者として中村康則氏(FA システムエンジニアリング(株))他に,
- 3Dテレビメーカー各社の製品の特徴として,「3Dプラズマテレビ『3D VIERA』」パナソニック(株),「3D液晶テレビ『3D BRAVIA』」ソニー(株)について短くまとめたほか,
- 「立体映像関連ニュース」