OplusE 2012年7月号(第392号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
最新の研磨加工と計測技術
- ■総論
- O plus E 編集部
- ■半導体デバイスプロセスにおける超精密CMP技術の動向
- 九州大学*,宮崎大学**,金沢工業大学***,土肥 俊郎*,大西 修**,黒河 周平*,畝田 道雄***,山崎 努*
- ■光を用いた最新の超精密研磨と計測事例
- クリスタル光学 桐野 宙治
- ■砥粒の滞留性を考慮した次世代研磨技術
- 立命館大学 谷 泰弘
- ■特殊ガラスと大型望遠鏡技術
- オハラ 南川 弘行
- ■重力波観測用レーザー干渉計における光学設計
- カリフォルニア工科大学 山本 博章
- ■EUV用高精度非球面計測技術
- ニコン 玄間 隆志
連載
- ■【一枚の写真】超高分解能光断層計測を活用し,タンパク質結晶の3次元・非破壊断層イメージングに成功
- 名古屋大学*,大阪大学**,西澤 典彦*,石田 周太郎*,松村 浩由**,廣瀬 未果**,杉山 成**,森 勇介**,井上 豪**,伊東 一良**
- ■【私の発言】ターゲット・オリエンテッドな技術的展開が次世代へ向けたものづくりの価値を構築する
- 埼玉大学研究開発機構オープンイノベションセンター客員教授 山本 碩德
- ■【第10・光の鉛筆】7 回折とエバネセント波
- 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】第84回 86. 結合波
- 東芝 本宮 佳典
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【研究所シリーズ】高輝度光科学研究センター 非晶質材料の機能発現を担う『乱れた構造』の可視化
- 利用研究促進部門 構造物性Iグループ 小原 真司,尾原 幸治
- ■【ホビーハウス】ジャバラ絵本と立版古(たてばんこ)
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
最新の研磨加工と計測技術OplusE編集部
今月の特集は「最新の研磨加工と計測技術」と題して,光学におけるものづくりに焦点を当てている。O plus Eでは,過去8 年にわたって加工関連の特集が組まれたことはなく,(2004 年9 月号「非球面加工と評価技術」以来)本当に久しぶりである。研磨加工は,研削加工と並んで光学加工の基盤を担い,加工の最終仕上げに用いられる。この仕上げ精度は,ナノメートルオーダーである。対象となる材料は,シリコンウエハーをはじめ,LED,太陽電池,光学レンズ,水晶デバイス,磁気・記録デバイス用ヘッドなどを挙げることができる。これらの基板では,近年ますます大口径化や薄厚化が進み,その平坦性や厚みの均一性の要求や寸法精度および形状精度の要求などが高まっている。ガラスやシリコンウエハーなどの平坦なものから,レンズや金型などの球面や非球面まで,半導体のように極小のものから天体望遠鏡のように極大なものまで,ナノメートルオーダーの超精密加工が求められている。同時に,このような加工面形状の評価を行うために,三次元計測技術は重要である。ここでは,最新の超精密研磨加工とその評価のための計測技術について,最先端の研究・開発に携わっている6名の研究者・開発者に興味深い話題提供を依頼した。1.超精密研磨加工技術
まず,九州大学の土肥俊郎氏らには,半導体デバイスプロセスにおける超精密CMP 技術の動向について紹介をお願いした。LSI 用半導体ウエハーの仕上げ工程において, 超精密研磨/CMP(Chemical MechanicalPolishing;化学機械研磨)は,なくてはならないものである。特に,このCMP 工程は,機能性材料の加工プロセスの最終仕上げ工程に位置する。ここでは,LSIデバイスの動向と対比して,32/22nm 時代に向けてCMP加工への要求についての解説と,それに呼応した加工法についての解説が成されている。続いて,(株)クリスタル光学の桐野宙治氏には光を用いた最新の超精密研磨と計測事例として,紫外光を用いた超精密研磨技術と干渉計を用いた実践的な計測手法について紹介をお願いした。CMPの化学作用を援用した高品質かつ高能率の平滑化の試みとして, 波長200nm 以下の真空紫外光を研磨中の工作物表面に照射し,銅の超平滑化を砥粒フリーで可能としている。さらに,加工面の計測において,対象とする軟質表面である銅を評価するため,一般に使われている接触方式の触針式粗さ計では傷が入るため用いることができない。そこで非接触な干渉計を導入した製品保証法について解説されている。
立命館大学の谷泰弘氏には,砥粒の滞留性を考慮した次世代研磨技術について解説をお願いした。半導体におけるシリコンウエハーと並んで重要であるガラスを鏡面にする超精密研磨加工技術が述べられている。ここで用いられる研磨材として酸化セリウムが最も優れている。しかしながら,レアアースであり,代替材料開発が求められている。ここでは,代替材料としての酸化ジルコニウム砥粒,高効率化のための多孔質エポキシ樹脂研磨パッドの開発について解説されている。
(株)オハラの南川弘行氏には,特殊ガラスと大型望遠鏡技術についての解説をお願いした。半導体の極小技術に対して,天体望遠鏡は極大技術である。ここでは,最新の大型望遠鏡技術開発に必要な特殊ガラスに焦点をおき,すばる,ジャイアントマゼランおよびTMTを例に,最新の望遠鏡事情を加工およびその評価法を交えて紹介していただいた。
2.超精密加工計測技術
カリフォルニア工科大学ライゴ研究所の山本博章氏には,重力波観測用レーザー干渉計における光学設計についての解説をお願いした。ここでは,特に,来年から試運転が計画されている米国のadvanced LIGO(LaserInterferometer Gravitational Wave Observatory)の説明と,光学素子,特にミラー,熱雑音,熱変形など重力波干渉計特有の問題とそれを満たすための光学基板の要求について解説していただいた。最後に,(株)ニコンの玄間隆志氏には,次世代露光装置EUV(Extreme Ultraviolet,波長13nm)用高精度非球面計測技術についての解説をお願いした。EUV投影光学系に用いられる非球面ミラーにはサブnmの面精度が求められるが,これらの高精度な非球面計測技術として,まず点回折干渉法,ヌル干渉法,透過型と反射型ゾーンプレート干渉法,次に非球面用三次元測定を用いた形状計測が容易な平面や球面とする方法,そして第3の方法は,高精度な参照非球面を用いる方法である。これらの計測技術によって,サブnmの計測精度を非球面形状で達成している。
以上,本特集は,最新の研磨加工技術とそれに伴う計測技術に関して,半導体や天文分野への応用例を挙げながら解説されている。世界の研磨材需要は,年率6.3%で上昇し,現在の330 億ドルから2015 年には448 億ドルに達する見込みという。ここでは,北米,ヨーロッパが横ばいなのに対して,アジアは10%以上の成長が見込まれているという1)。日本の材料技術,超精密加工技術および超精密計測技術の粋を結集して,これからますますこの分野が発展することを期待する。
ご多用中にも関わらずご執筆を御快諾いただいた著者の皆さま,関係者の皆さまに心から感謝申し上げる。
参考文献
- (株)グローバル インフォメーション http://www.gii.co.jp/press/fd232476.shtml