OplusE 2012年11月号(第396号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
医光連携
- ■総論
- 元・埼玉医科大学 吉澤 徹
- ■光MEMS技術の医療応用
- 九州大学 澤田 廉士
- ■通常の内視鏡画像のパノラマ化と立体表示,および診療への応用事例
- 千葉大学大学院工学研究科*,帝京大学ちば総合医療センター**,五十嵐 辰男*,石井 琢郎*,納谷 幸男**
- ■放射線治療のための患者位置決め支援システム
- イーアールディー 山本 浩隆
- ■光線力学療法
- ウシオ電機 木村 誠
- ■fNIRSによる最近の実験手法と研究成果
- 島津製作所 井上 正雄
- ■歯の形成と老化の可視化
- 大阪大学*,大阪大学歯学部附属病院**,福島 修一郎*,荒木 勉*,三浦 治郎**
- ■光音響イメージング法による皮膚の多機能診断
- 防衛医科大学校*,慶応義塾大学**,佐藤 俊一*,角井 泰之**,齋藤 大蔵*,寺川 光洋**
連載
- ■【一枚の写真】短時間での広視野ラマンイメージングが可能に
- 自然科学研究機構*,愛媛大学**,野中 茂紀*,大嶋 佑介**
- ■【私の発言】何か新しいものを作っておくと,誰かが面白い応用を考えるものです
- 東京工業大学 学長 伊賀 健一(2012年8月取材当時)
- ■【第10・光の鉛筆】11 非点光線束の追跡4 Youngの非点収差発見と眼光学への応用
- 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】第88回 90.ヘルツベクトル
- 東芝 本宮 佳典
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【研究所シリーズ】生理学研究所 生きたままのマウスの脳細胞を光で操作する技術の開発
- 脳形態解析研究部門・分子神経生理研究部門 松井 広,田中 謙二
- ■【ホビーハウス】ステレオ写真の本(96)レンチキュラーレンズを用いた商品の大爆発
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
医光連携元・埼玉医科大学 保健医療学部 吉澤 徹
工学の立場から医学を見る,あるいは医学分野に工学技術を取り込むという考え方は旧くから存在していたが,従来は診断,検診あるいは手術などにあって医学者の経験が主要な役割を果たしてきた。医学的な診断には視診・聴診・触診・問診があり,これらによって「病状を大体判断すること」が行われてきたが,こうした手段による判断では,経験が多くを支配することとなりがちであった。この視診という言葉からも光や画像との関連が示唆されているし,判断の精度を高めるための医学的な観察や検査にあっては,単に肉眼で行われる以外に,光および画像関連分野の技術,例えばX線CT(computedtomography)やOCT(optical coherence tomography)あるいは超音波技術を利用して,肉眼では見えない生体の内部情報を可視化することも行われている。さらに医学検査においては,肉眼観察の分解能を高めるために顕微鏡観察は当然のことであり,顕微鏡技術などでは,逆に応用分野としての医学におけるニーズから発展した開発も挙げられる。こうした背景から,近年は医学と工学を結びつけて新たな原理手法や機器開発を目指す「医工連携」が生まれ,(場合によれば予算を獲得するための)プロジェクトの標語に使われている例としても多々見られる。さらには光学分野の立場からすれば,これらからの連鎖的な発想から「医光連携」が思い浮かぶ。例えば医学分野における課題の1つである生体形状の計測に関しては,モアレ計測技術が日本から生まれた画期的な三次元形状計測法として定着している。先ごろのオリンピックにおける短距離競走の覇者の独特の走法がその選手が患った脊柱筆者は医学的知識が皆無であったにもかかわらず,一時期を医科大学教授として過ごした。臨床医学ではなく,近年新設が続く保健医療学部における医用生体工学科に所属していたが,この学科自体が「医工連携」そのものを目指しており,検査機器あるいは人工心肺などの医用機器開発も課題であったが,課された役割は「医光連携」そのものであった。辟易はしたが,医科大学で光をバックグラウンドとする研究者は少ないとみえて,いくつかの講演会に引っ張り出された。そうした経験を踏まえて,今回の特集を組んでみた。医療における光源,光と患部組織とのマッチング,光ファイバーやMEMS(micro-electro-mechanical system)などのデバイス技術(一時期のマイクロマシンという表現も医学に遠因する),光および画像による診断などを考慮し,光分野の研究者や技術者に興味ある具体的な事例のいくつかをまとめてみた。