OplusE 2012年12月号(第397号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
大規模災害の調査・復興のための画像技術
- ■総論
- O plus E 編集部
- ■空からの情報収集の現状と課題
- パスコ 坂下 裕明
- ■2011年タイ王国チャオプラヤ川大氾濫の衛星解析
- 東京大学*,タイ王国宇宙技術開発機構,**竹内 渉*,Preesan Rakwatin **
- ■東日本大震災被災地を対象とした市街地の時空間モデリング
- 東北大学 岡谷 貴之,櫻田 健,出口 光一郎
- ■海中ロボットのカメラによる漁場海底の津波被害状況観察
- 東京大学 高川 真一
- ■放射性物質可視化装置「超広角コンプトンカメラ」の実証実験
- 宇宙航空研究開発機構 武田 伸一郎,渡辺 伸,高橋 忠幸
- ■方向別共起ヒストグラムを用いた放射線の通過痕跡検出―カメラによるガンマ線増減の把握―
- 電力中央研究所 中島 慶人
連載
- ■【一枚の写真】可視~赤外域における光の情報を利用するリモートセンシングによる資源探査
- 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 矢島 太郎
- ■【私の発言】光が我らを導く果てまで~光の導く交流が研究成果へつながる原動力に~
- 横浜国立大学理事(総務・研究担当)・副学長 國分 泰雄
- ■【第10・光の鉛筆】12 非点光線束の追跡5 Wollastonの広角めがねレンズ
- 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】第89回 91.レイリー散乱
- 東芝 本宮 佳典
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【研究所シリーズ】産業技術総合研究所 単色波線グリッドを用いた能動ステレオ法による動物体の高精度・高密度な形状計測
- 知能システム研究部門 サービスロボティクス研究グループ 糟谷 望,阪下 和弘,佐川 立昌
- ■【ホビーハウス】ステレオ写真の本(97)ステレオビューアが付いている本
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
大規模災害の調査・復興のための画像技術OplusE編集部
2011年3月11日に,千年に一度と言われる東日本大地震・津波と,それに伴って福島第一原子力発電所の事故が起きた。またその後,タイでは大洪水が起き,日本の企業も大きい打撃を受けたことも記憶に新しい。この5月5日にはつくば市を中心に竜巻が起こった。最近,非常に勢力が大きいハリケーン「サンディ」がアメリカ東海岸に上陸し,大きい被害を与えている。本特集は,このような大きい自然災害および大事故が起きた場合に役立つ画像技術について特集する。これらの大災害に対して,主に調査のために特殊な画像技術・機器が使われている。可能性も含めて,これらの分野で画像・映像技術が使われる分野を次のように分類する。
1:大地震,津波,洪水
2:復興計画
3:原子力発電所関連
それぞれの分類に含まれる画像技術を列挙すると,以下のようになる。
1:大地震,津波,洪水
1-1:地震関連
A:レスキュー活動:内視鏡による倒壊した建物に閉じ込められた人の観察
B:(海抜高さを含めた)地形の変化
1-2:津波関連
A:海底の様子および深さの変化
B:地上
・どこまで,どの高さまできたかの検証のための画像・映像
・アーカイブ(写真,ビデオ映像の保存)
1-3:大洪水
A:河の氾濫および浸水の計測
B:土砂災害の記録
2:復興計画
3:原子力発電所関連
3-1:炉内検査,計測のためのロボットの眼関連
3-2: 放射線源の分布や放射能レベルの観察および計測
A: 非常に強い放射能レベルである炉内&炉近くでの観察および計測
B: 炉から離れた地点での分布や放射能レベルの観察および計測
まず特集の1 番目として,上空からの飛行機による可視画像(航空写真)および人工衛星による合成開口レーダー(SAR:synthetic aperture radar)の画像による被災地の観察および測量として,「空からの情報収集の現状と課題」をこの業務をルーティン的に行っている(株)パスコにお願いした。ここでの作業では,1995年1 月に起きた阪神大震災の時の作業が非常に参考になったとも述べている。
2番目として,大洪水の人工衛星によるSAR画像解析について,「2011 年タイ王国チャオプラヤ川大氾濫の衛星解析」を東京大学の竹内渉先生らにお願いした。
3番目として,「東日本大震災被災地を対象とした市街地の時空間モデリング」として,東北大学の岡谷貴之先生らにお願いした。この報告では,地上で被災地を近くから観察・記録した画像を使って3 次元計測することにより,詳細な計測およびモデリングを行っている報告である。
4番目として,津波による海底の観察について「海中ロボットのカメラによる漁場海底の津波被害状況観察」を東京大学の高川真一先生にお願いした。
5,6番目として,原発のメルトダウンによる放射線飛散の計測および観察について,「放射性物質可視化装置『超広角コンプトンカメラ』の実証実験」として,宇宙航空研究開発機構の武田伸一郎氏らに,「方向別共起ヒストグラムを用いた放射線の通過痕跡検出―カメラによるガンマ線増減の把握―」として,電力中央研究所の中島慶人氏にお願いした。
また,今回の震災を大きな教訓として,実際に災害現場で役立つための災害対策用ロボットの研究開発が盛んになっている。先般公開された千葉工業大学等が開発した先行探査型移動ロボット「Sakura(櫻)」はその代表的な例であり,災害現場における情報収集・解析のための画像センシング技術が搭載されている。こういった極限状態において人に代わり動作可能なロボットの進展についても載せたかったが,都合でできなかった。