OplusE 2014年4月号(第413号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
広がりを見せる衛星利用
- ■身近になってきた宇宙,今こそ将来を考えるとき
- OplusE編集部
- ■超小型衛星が切り拓く新しい地球観測
- アクセルスペース 中村 友哉
- ■超小型衛星RISING-2搭載 マルチスペクトル望遠鏡
- 北海道大学*,ジェネシア**,仙台高等専門学校***,栗原 純一*,高橋 幸弘*,武山 芸英**,金井 美一**,若生 一広***
- ■小型地球観測衛星「ASNARO」の開発
- NEC 牟田 梓,小川 俊明
- ■商用衛星画像の利用促進に向けて
- パスコ 渡川 真規
- ■「ひので」の宇宙望遠鏡
- 宇宙航空研究開発機構*, 国立天文台**,清水 敏文*,坂尾 太郎*,原 弘久**
- ■次世代赤外線天文衛星SPICA
- 宇宙航空研究開発機構 中川 貴雄
- ■水星大気の謎を解く 水星探査計画BepiColombo MMO 衛星搭載ムサシ(MSASI)観測機
- 東京大学 吉川 一朗
- ■GCOM 搭載多波長光学放射計SGLI
- 宇宙航空研究開発機構 岡村 吉彦,田中 一広
特別企画
- ■国際画像機器展2013 特別招待講演
- 広島市立大学 日浦 慎作
連載
- ■【一枚の写真】質感の画像記録と再現
- 凸版印刷株式会社 長谷川 隆行,三好 裕樹,飯野 浩一
- ■【私の発言】「どうしてこんなきれいな,いろんな渦巻き銀河があるんだろう」と子供心に思ったのが自分の研究の原点
- 国立天文台 教授 家 正則
- ■【第10・光の鉛筆】28 ヘリオメーターの回折像とその対称性2
- 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】第105回 107. 光ビームの幅と角度の拡がり
- 東芝 本宮 佳典
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第14章 レーザーはおもしろい(その3)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■【4k映像システム開発の歴史と展望】9章 デジタルデータの恒久保存
- 小野 定康
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【ホビーハウス】時計・携帯電話と3D 映像
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
身近になってきた宇宙,今こそ将来を考えるときOplusE編集部
昨年のイプシロンロケットをはじめ,3 月には国際宇宙ステーション(ISS,International Space Station)の若田さん船長就任など,毎月のように宇宙に関するニュースが飛び交っている。しかも多くが日本独自のもので,宇宙と言えば米国や旧ソ連一辺倒だった一昔前とは隔世の感がある。ただ,ロケットの打ち上げのコストはまだ高く前述のイプシロンロケットでも目標の費用が30億円を超えるようで気軽にとは言えないようだ。そんな中で2 月に打ち上げられた降水観測衛星(GPM,Global Precipitation Measurement)では相乗りの大学発の小型衛星7 基が宇宙に飛び立った。その中には「芸術衛星」INVADAR(http://artsat.jp/)というユニークなものもある。打ち上げロケットが100億円もするH?Aロケットの相乗りなので一般的ではないが,少なくとも軍事利用や学術観測などからすればわれわれの生活により身近であることは間違いない。これは宇宙開発の技術が向上し,さらにそれを支える一般の技術も宇宙のような特殊な環境にも対応できるまでに進歩したことが一つの要因であろう。(相乗り衛星の実例は本編のRISING-2を北海道大学の栗原さん達に解説していただいている)
しかし,相乗り衛星や衛星打ち上げビジネスが話題になってきた背景には技術の進展だけでなく,社会がその巨額な開発費に対して見返りを求める冷静な目を持ち始めたこともあるのではないか。宇宙開発は国威発揚の側面があるので成し遂げるまではがむしゃらに頑張る,という段階はどこの国にもあるだろう。アメリカのアポロ計画,最近の中国の有人宇宙飛行の例を見れば分かる。
そのような観点からは今の日本はそれを過ぎた次の段階に来ているのであろう。初めて国産の人工衛星「おおすみ」を打ち上げたのはもう40 年以上前のことであるし,自前ではないが有人飛行も20 年以上前から実現している。月にも20 年前から周回衛星を送って最近では「かぐや」からの月の鮮明な画像を目にした。つまりは宇宙が技術の進歩により身近になっただけではなく,そのことによって精神的にも冷静さを取り戻して身近になったということである。
冷静な目でもって宇宙開発をながめるといろいろな問題も見えてくる。限られた予算の中で安全保障や防災,学術観測や商用利用,さらには有人宇宙技術などやるべきこと,やりたいことがたくさんある。最大の問題はやはり巨額の予算のであろう。
とにかく予算の問題がつきまとう状況を少しでも変えていくには民間の力を結集するのが一つの方法だろう。現にアメリカはNASAを通じて民間企業, 特にベンチャー企業に補助金を出して有人飛行のプロジェクト(NASA Commercial Crew integrated Capability(CCiCap))を進めるようで,その成果をISSの次の計画に生かすことで全体として予算圧縮する戦略のようだ。
軍需産業が成立しておりベンチャー企業の勢いがあるアメリカと比べると同じような形で民間による宇宙ビジネスを進めることはなかなか難しいと思われる。しかし,日本にはこれまでいろいろな産業で培った裾野の広い技術がある。これを何とか生かして次の宇宙開発につなげることができないかと思う。これについては本編のアクセルスペースの方々に解説していただいてる。さらにこれまで日本が入り込めなかった世界の衛星市場に小型衛星で参入する「ASNARO」プロジェクトも進んでいる。(本編ではNECの牟田さん達に解説をお願いした)また,商用衛星画像の質も向上しているので防災やリモートセンシングなども民間の力で低予算化の可能性も出てきている。
今回は上に述べたような段階にある日本の宇宙開発の状況を衛星に絞って解説していただいた。前半の4編は小型衛星および衛星画像の民間利用に関するもので,後半の4編は大型の学術観測衛星に関するものである。衛星の技術は多岐に及ぶが本誌読者向けになるべく光学系に触れていただくように配慮していただいた。
最初の1編は民間の商用小型衛星「ほどよし1 号」の解説記事で,執筆者の(株)アクセルスペースは社長の中村友哉氏率いる少数精鋭のベンチャー企業である。今年の2月に朝日新聞の経済コラムに連載されてご覧になった方も多いかと思う。上で述べた日本の幅広い技術を使って困難な宇宙ビジネスに果敢に挑戦されている。
次は冒頭の相乗りの衛星のRISING-2について北海道大学と(株)ジェネシア,仙台高等専門学校の方々に解説していただいた。リモートセンシングに適した波長可変フィルターなど,一味違った先端デバイスなど独自技術を生かして50kgの超小型衛星の可能性を広げている。
次の「ASNARO」はやや大きい500kgまでの小型衛星で,これまでの2tクラスの衛星の性能に匹敵するのがセールスポイントになっている。これについてNECの牟田さん達にコストダウンのポイントを解説していただいた。
本誌ではこれまで衛星画像に関する記事は技術的な内容が中心であった。今回の(株)パスコの渡川さんには商用利用に関して初めて世界の現状を紹介していただいた。リモートセンシングで衛星画像に馴染みのある本誌読者にとっても貴重なものである。
清水さん達の「ひので」の3種類の望遠鏡はどれも宇宙空間でなければ実現できないものばかりである。真空が必要なEUVやX線はもとより,可視光も空気揺らぎの観点からこれほど鮮明な画像は地上では得られない。
中川さんの「SPICA」は壮大さが夢をかきたてる。3mの大口径もさることながら温度が6Kであること,それを地球から150万km離れた場所に停留させるなど技術的にも挑戦しがいのある計画である。
「水星観測計画」ではイメージインテンシファイヤーを用いる複雑な検出器で,しかも水星に到達するまで8年もかかるという困難な状況での開発を吉川さんに解説していただいた。
岡村さん達には「GCMO搭載多波長放射計SGLI」でわれわれの生活にかかわる環境変動の監視に用いる多チャンネルイメージング放射計について解説していただいた。カバーする波長範囲が広く波長ムラの要求仕様の厳しさが目を引く。
ともあれ,身近になったとは言え宇宙開発は巨額の費用がかかる巨大プロジェクトであり,国家の関与が不可欠なのは言うまでもない。関係機関は将来を見据えて日本の宇宙開発をより良い方向に進めてほしい。特に有人宇宙飛行技術については日本がかかわっているのはISSが唯一のものである。その運用が2024年で終わると言われている。船長に就任した若田さんに地上からエールを送っていた小学生の夢をつなぐためにもどうするかを考える時期にさしかかっている。
広告索引
- エドモンド・オプティクス・ジャパン(株)413-997(表3対向)
- オーシャンフォトニクス(株)413-002(表2)
- オーテックス(株)413-009
- (株)オフィールジャパン413-003
- (株)オプトサイエンス413-013
- (株)オプトロニクス社413-017
- カンタムエレクトロニクス(株)413-011
- (株)清原光学413-015
- セラミックフォーラム(株)413-018
- TEM(株)413-012
- (株)デルフトハイテック413-016
- (株)東京インスツルメンツ413-007
- (株)トライオプティクス・ジャパン413-014
- (株)日本レーザー413-999(表4)
- (株)ネオトロン413-010
- 光貿易(株)413-008