OplusE 2014年11月号(第420号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
半導体リソグラフィの過去・現在・未来
- ■特集のポイント
- O plus E編集部
- ■半導体リソグラフィの過去・現在・未来
- ギガフォトン 岡崎 信次
- ■世界半導体市場の展望
- 微細加工研究所 湯之上 隆
- ■液浸露光装置
- ニコン 松山 知行
- ■リソグラフィ用光源開発の現状と将来
- ギガフォトン 溝口 計,斎藤 隆志, 松永 隆
- ■16nmハーフピッチ世代以降の量産対応電子ビームマスク描画装置 EBM-9000
- ニューフレアテクノロジー 竹越 秀和
- ■ナノインプリントの半導体リソグラフィ適用
- 兵庫県立大学 松井 真二
- ■ブロック共重合高分子を用いたDSA(Directed Self-assembly)リソグラフィ
- EIDEC 東 司
連載
- ■【一枚の写真】植物細胞内でのセシウムの分布の可視化
- 物材機構 WPI-MANA 有賀克彦,小松広和,中西和嘉
- ■【私の発言】着想力が豊かで,実行力が速く失敗を財産とできる前向きな志向の人材を育んでほしい
- ナノサイエンスラボ 代表 門田 和也
- ■【第10・光の鉛筆】35 非球面に関する興味ある文献 5 Schwarzschildの2枚鏡理論とその後の展開
- 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】第112回 114.高次横モード光ビームの品質
- 東芝 本宮 佳典
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第21章 面発光レーザーの登場(その4)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【ホビーハウス】ステレオ写真の本(第102回)アナグリフ方式3Dジグソーパズルといろいろな3D関連グッズ
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
特集のポイントO plus E 編集部
本誌では,リソグラフィの内容を2010年10月号で特集としたが,その時には,ダブルパターニング技術を導入する議論が行われていたころであった。それから四年,まさにその技術は半導体デバイス量産現場で使用されている。一方,今後のリソグラフィ方式は,さらなる多い回数の複数露光方式・マルチパターニングか,またEUV(Extreme Ultra Violet)がいよいよ採用されるか,はたまた別の方式かをいろいろ議論されているがまだ決定まで至っていない。そこで今月号の特集を「半導体リソグラフィの過去・現在・未来」と題し,30年位前から未来までの技術をまとめ,予想した内容とする。
さらに「私の発言」に,日立製作所で長くリソグラフィ技術の研究・開発をされた門田和也氏のインタビューをお願いし,その内容を掲載したので併せてお読みいただきたい。
まず,執筆をお願いした七件の記事に関して簡単に紹介する。
最初にギガフォトン株式会社の岡崎信次氏に,本特集と同じ,「半導体リソグラフィの過去・現在・未来」という題で執筆していただいた。
解像度 2μmのコンタクト露光方式から,現在のArFエキシマレーザーを光源として使用する液浸露光方式を使用したダブルパターニングに関して,さらに未来の方式の候補として,マルチパターニング,EUV,ナノインプリント,マスクレスリソグラフィー(ML2:Mask Less Lithography),DSA(Direct Self Assembly)に関して紹介していただいた。各方式の現状での問題点をご指摘いただいたが,技術面ではマルチパターニングが,一番実用化に近いように感じた。
二番目に微細加工研究所の湯之上隆氏に,「世界半導体市場の展望」という題で執筆していただいた。
36年後の2050年に世界半導体市場がどこまで成長するかの展望であり,現在の通説である半導体デバイスのパターンの微細化が止まっても,世界半導体市場への影響は極めて小さく,成長を続けると予想されている。
その理由は,半導体が既に一般汎用技術GPT(General Purpose Technology)であり,半導体なくして人類の文化的な生活を維持することは不可能,とされている。
かなり大胆な仮定によれば,世界半導体市場は,2010年の1500億ドルから,年に1125億ドルずつ増大し,2050年には2.5倍の7500億ドルに成長すると予想されている。この仮説では,世界人口ピラミッドが変遷し,半導体を購入する富裕層,中間層が増大する,とされている。さらにIoT(Internet of Things)の普及により上方修正もありえるとのことである。
三番目に株式会社ニコンの松山知行氏に,「液浸露光装置」という題で執筆していただいた。
投影光学系に関しては,1980年代のg線ステッパー用のものから,現在のArFエキシマレーザーを光源として使用する液浸露光方式のスキャナー用のものまで,レンズの設計例,レイアウト例を示していただいた。
一度の露光で投影光学系により転写される相対的な情報量(Information Volume)が,露光波長の短波長化,高NA(Numerical Aperture開口数)化,露光領域の拡大化により拡大していった具体的な数値を示してくださった。少しでも解像性能を向上させ微細なパターンを形成させるために,SMO(Source and Mask Optimization)と呼ばれている技術(本号の表紙にその最適結果を掲載),露光の熱による収差に関しての補正,ダブルパターニングのための重ね合わせ技術に関しても紹介していただいた。
四番目にギガフォトン株式会社の溝口計氏,斉藤隆志氏,松永隆氏に,「リソグラフィ用の光源開発の現状と将来」という題で執筆していただいた。
今回は,ArFエキシマレーザーとCO2レーザー励起LPP-EUV 光源に関して紹介いただいた。(LPPは Laser Produced Plasmaの略)
ArFリソグラフィ用光源のArFエキシマレーザーとして,2004年には,出力45W(発振周波数4kHz)の製品を量産とし,昨年2013年には,出力120W(発振周波数6kHz)まで性能を向上した製品の主要諸元を紹介していただいた。
EUVリソグラフィ用光源として,LPPと呼ばれる,高繰り返しのCO2レーザー発振光を,Sn(スズ)ドロプレットに照射し,そこで得られたプラズマからの13.5nmのEUV光を大口径Mo/Si多層膜コレクターで中間集光点IF(Intermediate Focus)に集光して使用される。CO2レーザーとしては,100kHz,15nsのパルス発振で20kWを超える出力が実証されている。EUV光の出力としては, 本年2014年6月に92Wを確認できており,2015年以降に250Wを目指して開発を行っている。
五番目に株式会社ニューフレアテクノロジーの竹越秀和氏に,「16nmハーフピッチ世代以降の量産対応電子ビームマスク描画装置 EBM-9000」という題で執筆していただいた。
リソグラフィでは転写したい半導体デバイスパターンは,マスク(縮小露光の場合はレチクルと呼ばれている)の上に電子ビーム(e-beam)により描画される。その装置であるマスク描画装置EBM-9000を,ニューフレアテクノロジー社では,昨年2013年12月に,16nmハーフピッチ世代(4倍のレチクルの場合64nm)以降の量産対応機としてリリースした。本記事では,その装置性能,寸法精度1.3nm(3σ),位置精度3.0nm(3σ)を可能とする技術に関して執筆していただいた。
六番目に兵庫県立大学の松井真二氏に,「ナノインプリントの半導体リソグラフィ適用」という題で執筆していただいた。
ナノインプリントでは,ウエハ上に塗布した紫外線硬化樹脂へ等倍マスク(テンプレート等とも呼ばれる)を押し付け,紫外線を照射することで,ナノメートルオーダーのパターンを形成する技術である。
本記事では,モレキュラーインプリント社の技術に関して説明していただいた。
(なお,モレキュラーインプリント社は,本年2014年4月にキヤノン株式会社により買収され,キヤノンの子会社キヤノンナノテクノロジーズCNTとなった)
低粘度の紫外線硬化樹脂をインクジェットノズルにより,インプリントする直前にインプリントする部分だけに滴下することで,11nmハーフピッチのパターンを形成できている。
現状の装置では,重ね合わせ精度10nm(3σ),スループット10枚/時間,欠陥密度10個以下/cm2であり,それぞれの目標仕様8nm(3σ),20枚/時間,1個以下/cm2を達成するためには,さらなる開発が必要であるとしている。
最後に株式会社EUVL基盤開発センター(EIDEC)の東司氏に,「ブロック共重合高分子を用いたDSA(Direct Self Assembly)リソグラフィ」という題で執筆していただいた。
DSAは,事前に形成したガイドパターンの中に,セグメント間に働く斥力または引力の非常に強いブロック共重合高分子BCP(Block CoPolymer)を塗布し,アニールによる熱エネルギーで自発的に規則的なパターンを形成する方法である。
本記事では,直径サブ30nmコンタクトホールパターンと15nmライン&スペースパターンを形成した結果を紹介していただいた。
前に,本誌でリソグラフィに関しての特集を行った時には,既に日本の「半導体」は元気が無い状態であった。
その後の四年の今,ほんの一部を除いて,さらに悪い状態になっているのではないだろうか。
本号の「私の発言」の門田氏のインタビューの内容からその原因の一部がわかったが,それを踏まえて,日本の「半導体」の復活はないものであろうか?
本特集の湯之上氏の予想の様に30年以上の先も「半導体」が人類に必要なものであるのなら,まだ挽回の余地があるはずである。
日本の「半導体」の復活に少しでもお役に立てるよう,今後もこの様な特集をおこない,情報出しをしていきたい。
なお,記事の中の用語に関して,できるだけ説明をお願いしたが,不明な用語等については,JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会 半導体部会)の半導体用語集1)などをご参照いただきたい。
広告索引
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