OplusE 2014年12月号(第421号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
自動運転に向かう車載センサーフュージョン
- ■特集にあたって
- O plus E 編集部
- ■自動運転に向けた光センサーおよび光ネットワーク
- 豊田中央研究所*,豊田工業大学**,各務 学*,**,ニクラス・クリスチアーノ*, 城殿 清澄*, 高井 勇*, 山下 達弥*
- ■車載テレマティクスとネットワークの動向
- 共創企画 中條 博則
- ■車載用カメラモジュールの市場・業界・技術動向
- 共創企画 中條 博則
- ■量産性の観点からの遠赤外線光学素子の再検討
- ユミコアジャパン 安田 傑
- ■赤外線用カルコゲナイド光学部品の精密成型技術
- Fraunhofer Institute for Production Technology IPT*,セラミックフォーラム**,Katharina Schulz*,Olaf Dambon*,加藤 石生**
- ■運転支援システムのための歩行者検知・追跡技術
- 慶應義塾大学 青木 義満,片岡 裕雄
- ■イメージセンサーを用いた可視光通信とITSへの応用
- 名古屋大学 山里 敬也
連載
- ■【一枚の写真】10μmの微小な粒子1個から新しい白色LED用蛍光体を開発
- 物質・材料研究機構(NIMS) 武田 隆史
- ■【私の発言】新しいものを持ってきてお客さんに知らしめるというのが,私の仕事
- オーテックス 代表取締役 福井 博
- ■【第10・光の鉛筆】36 Laurent Cassegrainとカセグレン式反射望遠鏡
- 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】第113回 115.光ビームの角運動量
- 東芝 本宮 佳典
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第22章 発光ダイオードの輝き(その1)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【ホビーハウス】ステレオ写真の本(第103 回)ランダムドット・ステレオグラムの本の新たな動き
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
特集にあたってO plus E 編集部
この記事および後続の記事では,アルファベットの大文字を並べた略語が多く出てくる。冗長性を避けるために,本文中ではその略語だけで使っている。そこで,本特集では,専門でない読者のために,編集部として,この記事の最後に,それらをリストアップし,簡単な説明を加えて一覧にした。この特集記事を読む際の参照にしていただきたい。1.はじめに
本誌2012年6号で“車載カメラとセンシング技術の進化”として特集した。その特集の大部分は可視光画像技術関連であった。しかしこの2年半たった現在,自動運転の話題が,報道・学会誌での特集・協会のセミナー等で多く取り上げられている。これまでの安全装置としては,ABS等ドライバーの運転の未熟さを補うシステムが大半だったが,最近では事故を未然に防ぐ,より高度な事故防止システムが搭載されるようになってきた。追突防止システムが,多くの車でオプションとしてあるが,新車を買う人の半分以上がこのシステムを付けるようである。 その理由としては,1:DAS(Driver Assistant System)の普及
運転支援システムは,始まった当初は運転技術を低下させるとして,運輸省(現在の国土交通省)は支援システムの性能を意識的に下げていた。追突防止自動ブレーキは時速30km/hourでしか作動しないように規制していた。しかし運輸省の考え方も変わっていき,最近の新車では,乗用車を中心に,運転支援機能がオプションで付き,自動車の事故を少なくする技術が少しずつ車に搭載されるようになってきた。EyeSight,アラウンドビューモニターなどの画像機器や追突防止のエマージェンシイ・ブレーキなどである。このようなシステムはAdvanced Driver Assistant System(ADAS)と呼ばれる。また将来的には自動運転の開発も進められている。2:法律の施行
トラック,(長距離)バスへの搭載義務化2014年11月から,大型トラックや大型バスでAEBの義務化が始まる。2014年11月以降にモデルチェンジする車種から適応が始まる。継続して生産する車種も,2017年11月から搭載が義務付けられる。
3:IT企業の車の製造と販売の発表
自動車のIT化(グーグル社の自動運転車の発表)4:車載用(イメージ)センサーシステムの安価化
5:車メーカーは景気がよい。
6:2013年に自動運転車がデモされ,安部総理も乗ったことがマスコミで報道され話題になった。
などが考えられる。2.センサーフュージョン
より作動する信頼度を向上させるために,複数種類のセンサーの連携がなされている。これを“(車載)センサーフュージョン (sensor fusion)”と呼ぶ。種々の車載センサーの模式図を図1に示す。 車載センサーフュージョンは,ADAS以外の分野ではかなり以前から使われている。車の走行安全性を向上させるESCの一例を図2に示す。このシステムは高級乗用車にはほとんどのメーカーが採用している。(呼称はそれぞれのメーカーで異なる。) 歴史的にみると,最初に搭載されたのが自動ブレーキシステム(Pre-Crash Safety system, PCSと略)である。このシステムは,当初は車を完全に停車させるのではなく,車速を自動的に下げる機能しか持たなかった。あくまで,追突した時の被害を低減するための機能だった。これを最初に搭載したのは2003年でホンダの高級乗用車インスパイアであった。運転支援システムは,始まった当初は運輸省(現在の国土交通省)の意向で支援システムの性能を意識的に下げていた。追突防止自動ブレーキは時速30km/hourでしか作動せず,また車速を30km/hourから10~20km/hourに減速する機能しか持たなかった。あくまで,追突した時の被害を低減するだけの機能だった。このように規制していた主な理由としては,運輸省は,これらの運転支援システムの性能が向上すると,ドライバーの運転技術が低下することを懸念したからである。
しかしその後,2008年にスウェーデン製のSUVであるボルボXC60が時速15km/hourであれば,完全に停止する機能を搭載した。この車の日本への輸入を許可するために,2009年に国土交通省は技術指針の「解釈」を変更し,時速30km/hourであれば,自動的に完全停止することを認めるようになった。これを最初に採用した日本の車製造会社は富士重工業(株)である。2010年に「レガシィ」に時速30km/hour以下であれば,自動停止が可能なPCSが搭載された。このシステムを同社はEyeSightと名づけた。
その後国土交通省は,時速30km/hour以下という速度の制限をなくしたので,多くの車にオプションとして搭載されるようになり,現在に至っている。2014年10月に国土交通省と自動車事故対策機構が行った予防安全性能の評価で,EyeSightを搭載した富士重工業の「レヴォーグ」,トヨタの「レクサス-LS」,日産自動車の「スカイライン」の3車種が最高評価を得た。
3.ADASの現状
本誌2012年6号で“車載カメラとセンシング技術の進化”として特集した。しかし大部分が可視光画像技術関連であった。(一部に近赤外線カメラ応用も含まれていた。)最近,レーザーレーダーや夜間運転手が見えない人を検出する“赤外線技術”が急速に進んでいる。ここでの赤外線は,波長が8~12μmの赤外線域である。従来,この波長域の特にイメージングデバイスであるレンズやイメージセンサーを含む撮像システムは軍事用として開発されていたので高価であったが,最近セキュリティー用や車載目的で比較的安価なデバイスが開発されつつある。
4.まとめ
本特集では,これから使われる可能性がある技術のなかで,センサーと画像技術に焦点をあてて,研究開発の現状を紹介する。追突防止目的で,現在オプションとして,特に乗用車に付けられているセンサー類としては図1に示したように,ミリ波および近赤外線レーダーが主であり,(ステレオ)ビデオカメラも併用されている。ミリ波レーダーでは,ドップラー効果による周波数シフトにより,自車と前方および後方との相対速度も検出できる。この特集では,2012年6号とのオーバーラップを避けるため,可視光映像に関する記事は少なくした。本特集では,
1:自動運転に向かう全体の流れとして,豊田中研(及び豊田工業大学)の各務学氏に車載LANを中心に俯瞰していただいた。また,車載レーザーレーダーについても紹介していただいた。
2:グーグルやアップルがなぜ自動運転車を開発しているのかの背景など,車とテレマティクスの連携化について,および
3:車載イメージセンサーの動向について,共創企画(株)の中條博則氏(元・東芝)にお願いした。
夜間に前方に歩行者がいることを知らせる遠赤外線カメラがこれから多くの車に搭載されると予想される。それ関連の記事を3編お願いした。この分野は“暗視カメラ”として,主に軍事用に開発されてきたので非常に高価であったが,最近車載を目的として安価なレンズやイメージセンサーが開発されつつある。そこで,
4:ナイトビジョンカメラの現状と将来技術について,水戸康生氏((株)ビジュアルセンシング)に,
5:カルコゲナイトレンズについて,のシュルツ氏(フラウンホッファー研究所(独))他に,
6:低コスト赤外レンズについて,安田 傑氏((株)ユミコア・ジャパン)に,
さらに,
7:前方歩行者をカメラ映像から検出する最近の研究について,青木義満氏(慶応大学)に,
8:ITS可視光通信について,山里敬也氏(名古屋大学)
にお願いした。
欧州では,フォルクスワーゲン社が中心となり,自動運転の研究プロジェクト “AdaptIVe”(Automated Driving Applications & Technologies for Intelligent Vehicles)が2014年2月にスタートしている。最近では,車載用のCPUやリアルタイムOSの発表も相次いでいる。これらは将来の“自動運転3)”につながる重要技術である。
参考文献
- クルマのすべてがわかる事典,青山元男著,ナツメ社,2013
- 自動車の動くしくみ,竹 志夫著,新星出版社,2011
- 自動運転;逢坂哲嬭監修,日経BP社,2014年10月
英語略語一覧
最後に,本文中に多くの英語略語が使われているので,それらの中の主なものをリストアップしておく。- ABS(Anti-lock Brake System):ブレーキがロックするのを防ぐシステム
- ACC(Adaptive Cruise Control):定速走行・車間距離制御装置
- ADAS(Advanced Driver Assistant System):先進運転支援システム
- AEB(Advanced Emergency Brake):先進緊急ブレーキ(欧米で使われる。PCSと同じ)
- AT(Automatic Transmission)
- DAS(Driver Assistant System):運転支援システム
- ECT(Electronic Toll Collection):ノンストップ自動料金収受システム
- ESC(Electronic Stability Control):車両横滑り時制動力・駆動力制御装置
- EyeSight:富士重工業(株)が製造販売する車に搭載されている事故防止システムの総称
- ITS(Intelligent Traffic System):高度道路交通システム
- PCS(Pre-Crash Safety system):追突防止自動ブレーキシステム((日本で使われる,)AEBと同じ)
- VICS(Vehicle Information & Communication System):道路交通情報通信システム,ITSに含まれる
- RVM(Rear Vehicle Monitor)
- SUV(Sport Utility Vehicle)
- TRC(TRaction Control):滑りやすい路面での発進を補助する装置
広告索引
- (株)インデコ421-002
- エドモンド・オプティクス・ジャパン(株)421-997
- オーシャンフォトニクス(株)421-008
- オーシャンフォトニクス(株)421-009
- オーテックス(株)421-012
- (株)オプセル421-013
- (株)オプトサイエンス421-014
- (株)清原光学421-015
- コーンズテクノロジー(株)421-010
- コーンズテクノロジー(株)421-011
- (株)システムズエンジニアリング421-007
- (有)セイワ・オプティカル421-016
- (株)東京インスツルメンツ421-003
- (株)日本レーザー421-999