OplusE 2015年6月号(第427号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
進化が続く光学設計法・光学系開発
- ■特集にあたって
- O plus E 編集部
- ■非球面,自由曲面の表現
- 矢部 輝
- ■CODE V 新機能紹介
- サイバネットシステム 阪口 貴之
- ■中間周波数形状を考慮した光線追跡シミュレーションによる光学素子加工面の評価
- 東京電機大学*,理化学研究所**,森田 晋也*,山形 豊**
- ■25倍ズームと高解像度を両立した実体顕微鏡Perfect Zoom System
- ニコン 三宅 範夫,水田 正宏,品田 伸宏
- ■全天球カメラの開発
- リコー 佐藤 裕之,吉川 博美
- ■すばる望遠鏡用の超広視野補正光学系の開発
- キヤノン 松田 融,道塲 直人
- ■Tilted Offner 光学系
- 目白ゲノッセン 上原 誠
- ■コンピュテーショナルフォトグラフィとライトフィールド
- 東芝・セミコンダクター&ストレージ社 坂東 洋介
連載
- ■【一枚の写真】複数台カメラによる高解像度全天周オーロラ映像の撮影
- 国立極地研究所・宙空圏研究グループ・准教授 片岡 龍峰
- ■【私の発言】人々の役に立つ製品を作り出すのはとても楽しく非常にエキサイティングだった
- アリゾナ大学 JAMES C. WYANT
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第28章 井の中の電子(その1)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【ホビーハウス】カメラのシャッター機構とスライド式しかけ絵本
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
特集にあたってO plus E 編集部
光学系というのは物体からの光を集めて像面上に集光させるという単純なもので,ガリレオの時代から全く変わらず,レンズや反射鏡を用いている。ただし,大型化,マイクロ化,高精度化,波長域の広帯域化など,技術の向上が続けられ,生き物と同じようにまさに進化している。今回の特集では,光学設計・光学系開発の最近の発展を紹介していただいた。光学設計技術に関して3編,実際の光学系開発や最新の光学系の紹介について5編である。お忙しい中時間を割いて書いていただいた貴重な原稿について,編集部として簡単に紹介してみる。著者の意図とは異なるような,解釈やコメントがあるかもしれないが,それこそがこれらの分野が新鮮で,さらに発展するであろうことの証しであるとして,許していただければと思う。
矢部輝さんの「非球面,自由曲面の表現」の議論は非常に深遠な内容である。長年光学設計に携わり,非球面を実際に適用してきた矢部さんならではの含蓄のある言葉がちりばめられている。多くの光学設計者にとって非常に参考になると思われる。まだまだ研究の余地があることが延べられており,多くの若い人に刺激を与えてくれたのではないだろうか。英語であったら,多くの読者はこの深遠さに触れられないと思う。日本語であるからこそ,接することができるのであろう。
「Code-Vの新機能」について,サイバネットシステムの阪口貴之さんに紹介していただいた。光学系の進化に伴い,設計ソフトウエアが休み無く発展していることが良く分かる。自動設計においては,目標を制約条件として扱うものと評価関数として扱うものとを上手に区分けして扱う手法,ローカルミニマムを避ける手法,製造誤差を考慮した方法など,様々な発展が紹介されている。また,光学性能評価に関する新たなモードも拡充されている。BSPなどは,回折理論の基礎に関わるものであり,使用する側としても,機会があれば考え方の詳細を知りたいところである。
汎用光学設計ソフトウエアとしては,Code-V,ZEMAXなど米国製ばかりである。英語で最初から開発できることが世界標準につながっている大きな要因だと思うが,サイバネットシステム社も貢献している,たゆまない発展がそれを維持しているのであろう。日本語の文化を大事にすることも学術産業の発展には必要であり,サイバネットシステムの今回の記事は非常にありがたい。
2011年5月号で理化学研究所(理研)の西舘陽平さんに,長田パッチを基本とした実光学面での光線追跡について,主に理論的に解説していただいた。今回は,「中間周波数形状を考慮した光線追跡シミュレーションによる光学素子加工面の評価」と題して,実際の適用における課題とその解決策と結果について,森田晋也さんと山形豊さんに紹介していただいた。非球面は非常に多用されており,精度も非常に厳しくなっている。実際に光学系開発に携わっている技術者に非常に参考になり,また有意義な内容である。光学面形状の評価に関する基礎理論は,ますます重要になってくると思う。
「25倍ズームと高解像度を両立した実体顕微鏡 Perfect Zoom System」についてニコン,三宅範夫さん・水田正宏さん・品田伸宏さんに解説していただいた。ズームに伴って積極的に偏心をさせるというのは,他には無い様に思う。光学系をじっくり見ていて,このような機構ができれば口径を小さくでき,従来に無い高倍ズームの実体顕微鏡ができるのではないかという光学設計の着想はすごいが,これを実現できたのは,機械設計者や製造技術者との緻密な連携があったからであろう。実際の光学系の見えも良く,まだまだ光学系開発には余地があるのだということが示された技術であろう。
「全天球カメラの開発」について,リコーの佐藤裕之さんと吉川博美さんに,画像処理を中心に書いていただいた。処理のあるなしの画像の比較を明示していただき,画像処理の重要性が一目瞭然に理解できた。画像処理技術は非常に進んでいるが,今回の実用化のために様々な工夫がなされたのではないだろうか。画像処理の負荷を少なくするためにも,小型化の光学設計が必要であったと書かれているが,実際の完成品が得られるまでには大変な作業であったと思う。ソフト開発とハード開発の一体化・連携が,このような優れた商品を生ませたのであろう。
「すばる望遠鏡用の超広視野補正光学系の開発」についてキヤノンの松田融さん・道塲直人さんに書いていただいた。物作りの醍醐味をあらためて教えてくれるものである。「高い部品計測精度が高い部品加工精度を可能とし,高い部品加工精度が高い組み立て精度を可能にしていると言える。」と書かれているが,やり遂げた人の秘めた自信が感じられる。光学設計,機械設計,制御設計,光学計測,ガラス材料,光学研磨,組み立て…多くの人たちが意を一つにして,壮観なプロジェクトを成し遂げることの,感動が伝わってくる。具体的な技術にも様々な工夫がなされたであろう。波面計測で全体光学系を通るような光束で測定するというのも,素晴らしいアイデアだと思う。
「Tilted Offner 光学系」について目白ゲノッセンの上原誠さんに解説していただいた。この開発も,古典的な光学の範囲において,まだまだ見逃されているアイデアがあることを示している。プリント基板表面の観察などで,凹凸の側面を含めた表面形状の3次元的計測をしたいという要求がある。等倍の両側テレセントリック光学系にシャインプルーフの条件を適用して,物面と像面を傾け,具体的な光学系としてはオフナー型反射系を採用して,色収差,ペッツバール和を抑えるという,ある意味では教科書に載るような模範的な設計といえるであろう。しかし,開発当事者は,泥臭い試行錯誤の末にこのようなスマートな解に至ったのであろう。さらにイメージングエリプソへの展開など,今後の発展にも期待したい。
「コンピュテーショナルフォトグラフィとライトフィールド」ということで東芝の坂東洋介さんに概説していただいた。ライトフィールドカメラはかなり知られてきているが,まだまだ身近にはなっていないように思う。今後様々に発展が期待される技術であろう。その基本原理をかみ砕いて説明していただき,非常に分かりやすかった。例えば,ライトフィールドカメラの画像処理の基本である,被写界深度の調整,ピント位置の変更の修正の考え方が,簡易な数式によって明快に表現されている。(といっても最近のゆとり教育世代では理解困難な人もいるかもしれないが,文科省や中教審を恨まずに,式をじっと眺めて自分で考えていれば,良く見えてくると思う。)新たにライトフィールドカメラを学ぶ人にも,すでに知っていた人にも,今後の研究開発に参考になる見方や知識が得られたと思う。
光学系開発の最近の進展について,多くの素晴らしい原稿をいただき感謝している。古典的な光学技術は,不思議なくらいに進化が続いており,まだまだ発展していくことは間違いないと思う。
広告索引
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